移民問題は目新しいものではなく、主な対策もよく知られている。実際、1995年の一般教書演説で当時のビル・クリントン大統領は要点を次のように簡潔にまとめている。
移民問題とは何か
「特に大きな影響を受けている州だけでなく、米国のあらゆる場所に暮らすすべての米国人が、多数の不法入国者に不安を抱くのは当然のことだ。彼らが就く仕事は、米国民や合法的な移民が就いていたはずの仕事かもしれない。彼らが利用する公共サービスは、わが国の納税者の負担となる。だからこそ、わが政権は過去最多の国境警備隊員を新規雇用し、外国人犯罪者の国外退去処分を倍増し、不法雇用を取り締まり、不法滞在者への福祉給付を禁止するなど、国境の安全強化に積極的に取り組んできた」「私が議会に提出する予算案は、バーバラ・ジョーダン元下院議員が委員長を務める(移民改革の諮問)委員会が勧告したように、犯罪で逮捕された不法滞在者を迅速に国外退去させ、不法就労の外国人を特定しやすくする内容だ。米国は移民の国だが、同時に法治国家でもある。近年見られるような移民法の乱用を許すのは移民の国として誤りであり、その先に待つのは自滅だ。われわれはそれを阻止するべく、対策を強化しなければならない」
上院で可決された法案
共和党と民主党がともに移民問題の解決を望んでいることは、この演説からも明らかであり、それは現在も変わらない。最近の議会動向を追っている人なら、米南部国境を越えてくる不法移民を阻止し、在留資格を持たずに米国に滞在している人々に対処する法案を成立させる機運が高まっていることを知っているだろう。実際、バイデン政権は「米国史上最も厳しい国境警備改革」を盛り込んだとうたう法案を作成し、ウクライナなどの支援策を含むこの法案を上院の議決にかけた(この法案は、2月7日の採決では共和党議員が反対票を投じて否決されたため、国境関連の条項を除いた、対外支援に特化した法案として今月13日に可決された)。
下院議長とトランプが法案に「待った」
バイデンは国境法案を議会で取り上げるよう訴えているが、マイク・ジョンソン下院議長は下院での審議を阻止している。これは、法案が採択されると米大統領選の勝利が難しくなると考えるドナルド・トランプ前大統領の意向を受けた動きとみられる。下院では現在、ジョンソンの妨害を回避して本会議での採決に持ち込む動きが起こっている。具体的には、委員会審査省略動議が12日に提出され、動議成立に必要な署名(総議員の過半数)を集めている段階だ。
一方で、大統領選の選挙戦は本格化しており、バイデンとトランプは支持者と票を集めるべく、全米を駆けめぐっては移民問題について語っている。