ロシアは状況を利用
移民対策法案をめぐる綱引きが続く中、懸念される問題がある。それは、ロシアが移民問題で米国内の対立を煽り、またしても米大統領選に干渉しようとしていると報じられていることだ。先ごろAP通信の記事は、次のように指摘した。「ここ数週間、ロシアの国営メディアやロシア政府とつながりのあるオンラインアカウントが、米国の移民や国境警備に関して扇動的で誤解を招く内容を拡散・増幅させている。このキャンペーンは、2024年米大統領選を前に怒りと偏向をあおるために仕組まれたものとみられる。ロシアの偽情報を研究する専門家によると、(ウラジーミル・)プーチンがウクライナ支援を弱め、重要な援助物資の供給を断ち切ろうと図る中、米国民は今後さらに多くの偽情報にさらされる恐れがある」
記事はさらに続ける。「こうしたアカウントは、ソーシャルメディアへの投稿やオンライン動画、ウェブサイトの記事で移民の影響について虚偽の主張をし、移民による犯罪の例を誇張し、米国がメキシコ国境で取り締まりを怠れば悲惨な結果が待っていると警告する。その多くは誤解を与えるような内容であり、都合よく選別されたデータや、すでに否定された噂に満ちている」
見過ごされているロシアの干渉
これは米国にとって懸念材料であるはずだが、これまでのところ、しかるべき注目を集めていない。バイデンの場合は、下院が自身の弾劾に向けて次男ハンターとウクライナのつながりに関する調査を進めていることから、ロシアの偽情報を詳しく検討する方向には注意が向いていないのかもしれない。一方のトランプは、自身のロシアとのつながりや、米国の選挙へのロシアの影響力に関する感度のせいで、移民問題を「武器化」しようとするプーチンの動きが見えなくなっているようだ。トランプはアレクセイ・ナワリヌイの死についても、プーチンを非難することを避けた。要するに、都合の悪いことから目を背けている様子なのだ。
しかし、来たる11月の米大統領選と、世論調査における両候補の接戦ぶりを考えた場合、ロシアの干渉を放置すれば、それがゲームチェンジャーになりかねない。ロシアは移民問題を米国の弱点として利用することで、大統領選に影響を及ぼすだけでなく、より広く、米国民の自国制度に対する信頼を低下させ、その過程で米国のウクライナ支持を弱める方法を模索しているように見える。
(forbes.com 原文)