日本の水産物の輸出額第1位であるホタテは、大量の貝殻の廃棄という問題を抱えている。国内最大級のホタテ水揚げ量を誇る北海道猿払村では、貝殻が年間4万トンも廃棄され、処分に困っている状態だ。現在、建築資材や肥料などに再利用する取り組みが各方面で進められているが、決め手に欠く。そこで、大阪の老舗プラスチック製品メーカー甲子化学工業と、総合広告会社TBWA HAKUHODO(TBWA博報堂)が、ホタテ漁師の安全を守るヘルメットをホタテで作ることを考案した。
ホタテの貝殻の主成分はコンクリートにも使われる炭酸カルシウムだが、それだけではヘルメットにならない。そこで、ホタテの貝殻と廃棄プラスチックを組み合わせた新素材「カラスチック」を開発した。廃棄物の処理というだけでなく、バージンプラスチックを100パーセント使った場合に比べて二酸化炭素排出量を最大約36パーセント削減し、強度(曲げ弾性率)は33パーセント向上するという、新たな価値が生まれた。
また、筋の入った美しいデザインは、単なるお洒落な飾りではない。生物の特性を技術開発に応用する「バイオミミミクリー」の考え方で、貝殻が強度を保つ構造を模倣したものだ。これにより、筋(リブ構造)のあるものは、ないものと比較して強度が33パーセント向上した。
2022年に発売が開始され、2023年にはグッドデザイン賞「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた。そして今回、iF DESIGN AWARDでは、世界72カ国から1万800点のエントリーのなかから金賞に輝いた。HOTAMETは甲子化学工業のオンラインショップで一般販売もされている(現在は予約受付中)。今後は猿払村の特産品として、ふるさと納税の返礼品などで広く展開していきたいとのことだ。iF DESIGN AWARDを受賞したことで、世界からも注目されることになるだろう。
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