欧州

2024.03.04 13:00

ロシアは戦闘機も捨て駒に? ウクライナ軍、1日1機ペースで撃墜続ける

ロシア空軍のSu-34戦闘爆撃機。2015年、モスクワ郊外ジュコフスキーで(Kosorukov Dmitry / Shutterstock.com)

アウジーウカ攻防戦は、ロシア軍のスホーイが市内に滑空爆弾を何百発も落とし、守備隊の補給や防御を不可能にした結果、2月中旬にウクライナ側が撤収に追い込まれて終わった。
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ロシア軍はアウジーウカ方面の作戦から、たとえ地上軍の統率力が低く、途方もない損害(この方面でのロシア側の人的損失は少なくとも1万6000人にのぼったとされる)を出すとしても、攻撃時に破壊的な航空火力による掩護があれば最終的には勝利できるということを学んだようだ。

ロシア軍がこの戦法をとり入れたとわかるのは、滑空爆弾と歩兵の大軍でアウジーウカを落としてから2週間後、その西方などでも同様の戦い方を続けているからだ。

ロシア軍は現在、アウジーウカの西8kmほどにあるトネニケ村を掌握しようとしている。1日に30発もの滑空爆弾でこの村を徹底的に破壊するという方法によってだ。コバレンコは「敵はトネニケ村を地上から消し去っている」と説明している。
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この2週間にウクライナ側が撃墜したロシア空軍のスホーイ14機のうち、トネニケ爆撃時に撃墜されたものが何機あったのかは定かでない。とはいえ、5000万ドル(約75億円)の軍用機を数機、さらにはその搭乗員を犠牲にしてでも、民家100軒ばかりのこの小さな村を獲得しようとしているのは確かだ。

ロシアはこれを許容できる交換条件と考えているのかもしれない。もしそうだとしても、そうした交換は持続可能なものではない。ロシア空軍はすでにSu-34の4分の1を失い、残っている機体や搭乗員も滑空爆弾攻撃が激化するなかで急激に疲弊している

ロシアはこの局面で戦場の勝利を重ねることと引き換えに、何十年もかけて建設した空軍という短期間では再生不可能な軍事リソースを費やすことを選んだと言っても過言ではない。そしてその勝利は、空軍というリソースが尽きればもはや繰り返すことができない。

軍事アナリストの間でも、ロシアはここへきて全力攻勢に出ているとの見方が多くなっている。来年は現在よりも状況が不利になり、自軍の火力も落ちてくる可能性を見越して、いまのうちにできるだけ多くの領土を手に入れようとしているとの見立てだ。

「ウクライナの2025年の見込みについては、わたしはかなり楽観的だ。ロシアはある意味増長し、絶え間なく攻勢をかけては多くの人員を失っている」米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のロシア専門家であるマックス・バーグマンは先月そう語っている

ただしバーグマンのこの評価は、米国からウクライナへの軍事援助が再開されることが前提になっている。米議会のロシアにくみする共和党議員らによって昨年10月に援助が断たれるまで、米国はパトリオットミサイルを含め、ウクライナ軍が使う最高の兵器の最大の供与国だった。

米国の援助が再開すれば、ウクライナ軍は1日1機というペースでスホーイの撃墜を続けられるかもしれない。そうなれば数週間のうちにロシア空軍のSu-34戦力はもはや問題にならないほどまで消耗し、滑空爆弾の嵐も過ぎ去るはずだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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