観光客を遠ざける条例がすでに存在する
まず、これまで起こったことを簡単に説明しよう。エディンバラ市議会はすでに、市内の短期滞在者向け宿泊施設の数を大幅に減らすことに成功している。自宅の空き部屋を民泊として貸し出したい人に対して、とんでもなく厳しい制限を課したからだ。結果は予想どおり。毎年8月に開催される、世界的に有名な芸術と文化の祭典「エディンバラ・フェスティバル」期間中の宿泊費は、目玉が飛び出るほど高額になってしまった。昨年8月には、1カ月の賃料が4万2000ドル(約630万円)もするアパートすら登場した。
スコットランドの最高裁に当たる上級民事控訴院・外院はこの条例について、違法だとの判断を下した。エディンバラ市議会にとっては大きな打撃だったが、市内の民泊をめぐる状況はその後もあまり変わっていない。
住宅や建物を賃貸用に購入し、短期滞在者向けに部屋を貸し出している人たちは、怒りが収まらない。自炊設備付き宿泊施設の運営者団体「Association of Scotland's Self-Caterers」のフィオナ・キャンベル最高経営責任者(CEO)はインタビューで、裁判所の判断には喝采したが、現状には大いに不満だと憤りを口にしている。
エディンバラ・フェスティバルが、サッカーW杯や五輪と並び称される世界的イベントであることを思えば、現状は深刻だ。民泊を制限する動きは、エディンバラを訪れる観光客の減少につながる。そうなれば市内の事業者は苦境を強いられ、遅かれ早かれ従業員が職を失うのはほぼ避けられないだろう。
駐車料金の大幅値上げで、さらなる打撃
ここまで説明した状況だけでも、十分に問題だ。しかし、エディンバラ市の駐車料金に関する新たな規制は、市中心部の経済をいっそうめちゃくちゃにするだろう。どういう変更か。今年4月3日から、エディンバラ中心部の路上駐車スぺースの利用料金は一気に20%も引き上げられ、1時間あたり6ポンド70セント(約1280円)、1日あたり54ポンド(約1万300円)になるのだ。地元メディア「ミッドロージアン・ビュー」が報じた。
つまり、車で出勤して1日7時間の勤務(プラス1時間の昼休憩)を終えた人が、これだけの駐車料金を支払わなくてはならなくなるということである。駐車スペースは路上以外にもあり、料金もこれほど高額ではないが、決して安くはない。
たしかに駐車場を利用すれば料金がかかるものだ。とはいえ、計算してみれば、一般的な労働者にとってこの駐車料金がいかに大きな負担となるかがわかる。スコットランド議会によれば、同地における2022年の年間給与額の中央値は2万7710ポンド(約530万円)なのだ。
エディンバラ中心部で週5日働く人が、勤務中にマイカーを路上駐車しておく場合、1年間に支払う駐車料金は1万4150ポンド(約270万円)にも上る。税引き前年収の実に半分以上である。
筆者の見る限り、この政策によって、エディンバラ中心部に住んだり買い物に来たりするのを思いとどまる人は増える。誰もが苦しむことになるが、負担をかなり重く感じる人も出てくるだろう。
エディンバラ市議会もスコットランド議会も、通常は誠意ある政策決定を行っているそうだ。そう聞いた筆者は、こう返した。もしそれが本当なら、議員たちはきっと経済政策について最悪のアドバイスを受けているに違いない、と。
スコットランドの議員たちは、地元の経済を台無しにしたがっているかのように見受けられる。
(forbes.com 原文)