「Riley(ライリー)」という名称のこのAIシステムは、動画と音声データを収集して従業員のパフォーマンスを評価し、より多くの商品を販売した従業員にボーナスを割り当てる。ヴァルカノフは売上拡大を期待して、ニューヨーク州ロチェスターに本拠を置くHoptix(ホプティクス)が開発したこのシステムを1年弱前に導入した。
その効果は出ており、ライリーを導入してから売上は3%増えたという。「現状では、少しでも売上が伸びることはありがたい」と彼は話す。
ライリーは、ケンタッキーフライドチキンやタコ・ベルのフランチャイズ店を含む全米約100店舗に導入されている。このAIは、従業員と顧客の会話などのデータを取り込み、従業員によるアップセル(追加メニューや追加トッピングの提案)やアップサイズ(より大きなサイズの提案)、ロイヤルティプログラムへの勧誘とその頻度を検知する。顧客に最も多くの提案をし、売上に結びついた従業員には、AIが作成したスコアカードに基づいて現金ボーナスが支給される。
ホプティックスの創業者でCEOのケン・ビアンキによるとこのシステムは、管理職がパフォーマンスの低い従業員を特定し、必要なトレーニングを行うとことを支援するものだという。
しかし、専門家の一部は、この種のAIツールが、従業員に不当な生産性を課す口実として使われることを懸念している。「ファストフード業界における生産性の問題の多くは、深刻な人員不足の結果であることが多い。AIを用いた監視によって、搾り取るものがほとんどない従業員からさらに搾取することが懸念される」と非営利の研究グループであるData and Societyの研究者、アレクサンドラ・マティエスクは話す。