そしてもちろん、中国の報復に対してトランプ政権がどのようにやり返すかという問題もある。あえていうなら、来年は金融危機を引き起こした2008年のリーマン・ショックがささいな出来事のように思えるかもしれない。
問題の1つは、トランプ第2期政権が中国経済が落ち込んでいるときだけでなく、ひょっとすると急降下しているときにに蹴りを入れる可能性があることだ。中国の不動産危機が来年1月までに解決する可能性は極めて低い。習政権が、地方政府の資金調達のための投資会社に絡む9兆ドル(約1354兆円)の時限爆弾をそれまでに処理する可能性も低い。
中国はデフレ圧力が強まっている今、自国が世界を牽引していることをアジアに示しつつ、トランプ大統領の2度目の出番を迎えることになる。若者の失業率が過去最高を記録している最中でもある。習が2012年以降に自ら招いた失策のツケが回ってきている。
失策には次のようなものが含まれる。まず、習の改革チームは国有企業を革新的な民間企業に置き換えることに消極的だった。また、新型コロナ感染症が流行したときの厳しいロックダウン(都市封鎖)も挙げられる。それから、投資家に中国は「投資できない国」ではないかと議論させることになったハイテク企業への取り締まりもある。さらに、報道とインターネットの自由を後退させ、香港の野心的な意欲から学ぶのではなく中国政府の思いどおりに香港を作り直した。人民元の完全な兌換性を早急に実現することもしなかった。
エコノミストたちはもちろん、習が3期目の任期を利用して改革のシナリオを取り戻すことを望んでいる。2021年以降、中国株のバリュエーションが約7兆ドル(約1053兆円)も暴落したことは、投資家がいかに中国経済の先行きを案じているかを示している。これまでのところ、習の側近たちは中国経済の基礎的条件を強化するためにゆっくりと動いている。
11カ月後に新たな貿易戦争が世界経済を揺るがすとすれば、中国はあまり時間的に余裕がない。世界で最も重要な経済関係がかつてないほどうまくいかなくなることになるため、米国にとっても同じく時間に余裕がない。今はっきりしているのは、これまで以上に大規模で険悪な貿易戦争は、私たち全員に経済的な損失を与えるということだけだ。
(forbes.com 原文)