だが、2000人規模だった第110旅団の生き残った将兵らは、ここ数日の間についに西へ退却し、ロシア軍がじわじわと進める包囲を逃れた。
第110旅団は、増援に投入されたウクライナ軍屈指の旅団、第3強襲旅団の砲声がとどろくなか、廃墟と化しているアウジーイウカから撤退した。第3強襲旅団はウクライナ軍に2個しかない強襲旅団の1つ(もう1つは第5強襲旅団)で、名前が示すように強襲、つまり攻撃の訓練を受けている部隊だ。
しかしアウジーイウカでは、兵力も火力もロシア側に劣るウクライナ軍は防御する側にある。
ウクライナ軍は砲弾が絶望的なまでに不足している。これは昨秋以来、ロシア寄りの米議会共和党が米国の対ウクライナ支援を妨害してきたことの直接の帰結だ。アウジーイウカ方面のウクライナ軍部隊も砲弾が枯渇し、現地の数個旅団は十数個相当とみられるロシア軍の大軍をかろうじて押しとどめてきたのが実情だった。
ウクライナ軍の東部コマンド(統合司令部)は強襲旅団を防衛作戦に投入した。これは「積極防御」の実践でもある。積極防御とは柔軟で機動的、攻撃的な防御のことだ。
第3強襲旅団の積極防御は、先週ごろ、アウジーイウカ北西のコークス工場に展開した直後から顕著にみられた。
同旅団の米国製マックスプロ装甲車の砲手はヘルメットに取り付けたカメラで、コークス工場の敷地内を駆け回る自車と、M2重機関砲を撃ちまくる自身の姿を撮影している。
Avdiivka, a US-supplied MaxxPro MRAP in Ukrainian service with the 3rd Assault Brigade moves south of the coke plant, with the turret gunner engaging a Russian-held wooded area with a M2 .50 HMG. pic.twitter.com/9HrL3fQklo
— OSINTtechnical (@Osinttechnical) February 13, 2024
映像に見えるような、軽快な装甲車による機動や速射は第3強襲旅団の戦術の1つだ。とはいえ、ロシア側から撃ち込まれた砲弾が近くで爆発している様子は、この戦術が兵士らにとってどれほど危険かもまざまざと示している。
「ウクライナは砲弾不足をまずもってFPV(1人称視点)ドローン(無人機)、そしてもちろん兵士たちの命で補っている」ウクライナの軍事アナリストであるミコラ・ベレスコウは最近、ポッドキャストの番組でそう語っている。