陸軍の第3独立強襲旅団である。なぜこの部隊と思われるかと言えば、2月上旬時点で、東部に予備として配置されていることが確実にわかっているウクライナ軍の地上戦闘部隊は、第3強襲旅団しかないからだ。
アウジーイウカ方面への増援は「タウリヤ」作戦グループを率いるオレクサンドル・タルナウスキー指揮官が10日に発表した。通信アプリのテレグラムで「私たちは阻止線を強化し、追加の射撃陣地を設け、新鋭の有効な戦力を使用する」と表明し「兵站の配送も続ける」と述べている。
ウクライナ軍によるアウジーイウカの兵力増強は、あらかじめ想定されていた動きではない。ウクライナ側は、アウジーイウカにとどまって戦うことを選び、それにともなう非常に大きなリスクを引き受ける決断をしたもようだ。
4カ月におよぶ激戦の末、ロシア軍の第2諸兵科連合軍と第41諸兵科連合軍は今月、すでに占領下に置くドネツク市の北西8kmほどに位置するアウジーイウカ市内への突破口を開いた。ロシア軍の部隊は、第110独立機械化旅団を主力とするウクライナ軍守備隊への主要な補給ルートとなっている道路に、わずか数百メートルまで近づいた。
その時点で、タルナウスキーには2つの選択肢があった。第110旅団の残存兵らをロシア側にさらされた格好になっている市東側から引き揚げ、市の中心部や西郊の防衛線を固めるというのが1つ。
もう1つは、第110旅団に増援部隊を送り、はるかに多勢のロシア側の部隊を補給線近くから押しのけることだ。
もっとも、決断を下すのはタルナウスキーではなかった可能性もある。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先週、カリスマ的な人気を誇る軍トップのバレリー・ザルジニー総司令官を解任し、あまり人気のないオレクサンドル・シルシキー陸軍司令官を後任に据えた。
ザルジニーは、自軍の損耗を最小限に抑えるために機動防御を支持していたとされる。一方のシルスキーは、比較的固定した陣形 で頑強に戦い、大きな損耗もいとわない姿勢とされる。実際シルスキーは、昨年指揮したドネツク州バフムートの戦いで部隊を踏みとどまらせ、最終盤にはロシア側と並ぶほど兵力を消耗させている。
ゼレンスキーはシルシキーを総司令官に昇格させることで、たとえ大きな犠牲を出してでもアウジーイウカを守り抜く意思を示したのかもしれない。