アウジーイウカに入る道路はほかにもあるがもっと通過しにくく、フルシェウスキー通りが決定的に重要だ。タルナウスキーは、ロシア側の「狙いは明らかだ。まず、ウクライナ側の北翼部隊への補給手段を押さえようとしている」と説明し「私たちは敵の行動に対して相応の対応を取る」と明らかにしている。
「相応な対応」の1つが第3強襲旅団とみられる新たな部隊の投入というわけだ。第3強襲旅団は昨年12月以降、アウジーイウカから北へ80kmほど離れたクラマトルスクに予備部隊として置かれていた。
2022年に編成された2000人規模の部隊である第3強襲旅団は、2023年の反転攻勢で最後の勝利の1つとなった戦闘に参加し、アウジーイウカの北約40kmに位置するアンドリーイウカ村を解放した。この勝利によって、第3強襲旅団は休息や再訓練、新兵の採用をする機会を得た。米国製のM2ブラッドレー歩兵戦闘車を再配備されたという話もある。
ここ数週間でアウジーイウカの防御が徐々に崩れてきたため、第3強襲旅団は訓練を打ち切って前線に戻ることを余儀なくされたのかもしれない。この崩壊は、避けられないものではなかった。
昨年10月に総勢4万人のロシア軍部隊がアウジーイウカ方面の攻撃を開始してから、ウクライナ軍の守備隊側は万事適切に行ってきた。アウジーイウカ市内では壕に隠れ、市の北面を第47独立機械化旅団、南面を第53独立機械化旅団でそれぞれ増強した。市の周辺の低地を、突入してくるロシア軍部隊を狙い撃ちする「射撃場」のような場所にした。
アウジーイウカの防御が崩れてきたのは、米議会のロシア寄りの共和党議員らによる選択の結果である。くしくもアウジーイウカへの攻撃が始まったのと同じ昨年10月、議会共和党がウクライナへの追加支援の承認を拒んだあと、第110旅団などが市の周辺を砲撃によるキルゾーン(撃破地帯)にするうえで頼りにしていた榴弾砲は、次第に鳴りを潜めるようになっていった。
米国はウクライナの戦争努力向け弾薬の主要な供給国だった。以前はロシア側と互角だったウクライナ側の砲弾発射数は急激に落ち込み、ロシア側のわずか5分の1になった。並行して、ウクライナの防空システムも弾薬が不足し始めた。