米アリゾナ大学と、トイレ用洗剤なども手がける英日用品メーカーのレキットベンキーザーの研究者らのチームは、大腸菌などに感染するウイルス「バクテリオファージMS2」を便器内に入れて流し、どう飛散するかを実験した。MS2はノロウイルスのように胃腸炎を引き起こすウイルスのよいモデルになる。MS2はそうしたウイルスと同じように広がるが、ヒトに感染症を引き起こすことはないからだ。
実験は米国内の公衆トイレと家庭用トイレの2カ所で行われた。公衆トイレはオフィスビル内にあり、便器は水道管から直接水を流すタンクレス式で、便座は前部にすき間のあるU字形だった。家庭用トイレは住宅内のバスルームで、便器はタンク付きの標準的なタイプ。こちらの便座はすき間のない形状だった。
それぞれの便器にMS2を投入し、あるケースでは便器のふたを閉めて流し、別のケースではふたを開いたまま流した。続いて便器内の水、便座、便器下周囲の床、近くの壁からサンプルを採取し、培養してMS2がどれくらいあるかを調べた。
結果は驚くべきものだった。ふたを閉めて流す場合と開けて流す場合とで、MS2が便器内から便座や床、壁に飛び散る量に有意な違いは認められなかったのだ。ふたを閉めて流しても便器周りは汚染されていた。MS2の濃度が最も高かったのは、こちらは驚くべきことでないが便座の裏側だった。次に便座を舐める「チャレンジ」をやるときには思い出してほしい。
研究チームは、塩酸入り、つまり除菌のできる洗剤を使って便器を掃除すればどうなるかも調べている。結果はというと、それには大きな効果があった。塩酸配合の洗剤を使ってブラシで掃除すると、洗剤を使わない場合に比べ便器内の水の汚染は99.99%以上減少していた。また、ブラシ自体の汚染も97.64%減っていた。便器がウイルスの飛散元になるのを防ぐには、こうした洗剤を使うブラシ掃除が効果的なようだ。
今回の研究結果は、いずれにせよトイレで水を流すときには糞尿やらばい菌やらなんやらがまき散らされかねないことを、あらためて思い起こさせてくれた。便器の奥に水が渦を巻いて流れていく様子にうっかり見とれてしまわないようにしたい。便器や、壁を含めて、その周囲を定期的に消毒するようにすれば、トイレを感染源として自分や家族が感染症にかかったり、それをさらに友人などに広げてしまったりするのを予防する一助になるだろう。
(forbes.com 原文)