その後、1月25日にJAXAが月面着陸の結果と成果を発表。テレメトリデータを取得し解析した結果、目標としていた誤差100m以内での着陸について、障害物回避マヌーバ開始前(高度50メートル付近)での位置情報では、3~4m程度のズレとのこと。最終着陸地点は予定より東側に55メートルほどのズレで収めていたとし、世界初のピンポイント着陸に成功したとしている。
また、着陸間際にSLIMから分離した超小型月面探査ローバ「LEV-1」と変形型月面ロボット「LEV-2」は、それぞれの任務を果たし、LEV-2は球体から変形し展開。自律制御で光学カメラを使い複数枚撮影。その中からSLIMが写っている良質な画像を画像処理アルゴリズムによって選定し送信しているとのことだ。走行ログを含めたほかのデータに関しては、現在も解析中で今後その結果も公表される予定だ。
転送された写真を見てみると、SLIMの機体は月面にちょうど逆立ちしたような状態で静止しており、当初の予定より異なる姿勢で着陸態勢になったと推測される。原因は、高度50メートル付近でメインエンジン2基のうち、1基が異常をきたし、失われたとのこと。太陽光発電ができないのは、発電用パネルが上を向く予定が、写真の写っていない反対側方向に向いてしまったため、太陽光が当たらないため。今後、太陽光が当たり電力が復活して再び活動できる可能性にかけている。
また、SLIMに搭載したマルチバンド分光カメラによる撮影画像も公開している。観測対象となる岩石を特定するためのもので、257枚の低解像度モノクロ画像を合成。上の写真の右側灰色部分はスキャン運用を途中で切り上げたためデータのない部分。下の写真は拡大したもので犬の名前が振られているが、対象岩石を選別し、相対的な大きさがイメージできるようにつけたものだ。高解像度分光観測ができるか否かは、電力の回復にかかっている。
何らかの要因でエンジンの1基を失って当初予定とは異なるものになってしまったが、ピンポイントで着陸地点を航法カメラによって推測し、障害物の回避動作も行っていることから、技術的にはかなり誇れるはず。分離したLEV-1、LEV-2に関しても、世界初の完全自律ロボットによる月面探査、世界初の複数ロボットによる同時月面探査、LEV-2は世界最小・最軽量の月面探査ロボットという記録を達成。特にLEV-2はタカラトミーやソニーが協力し、民生のおもちゃの技術が未知の空間で活躍できたことが、今後の励みになることは間違いない。これからも、月へ、火星へ、新たなフロンティアへロマンを求めて続けてほしい。
出典:JAXA「小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸の結果・成果等について」ほかより