しかし、そのような市場の縮小の中で、ナイキは11月に人気であるスニーカー「ダンク」の3万足以上をNFTと連動させたコレクションの販売を開始した。このコレクションの購入は、既存のNFTのように暗号資産を用いた決済ではなく、クレジットカードで行えた。
ナイキはこのNFTの販売で700万ドル(1足平均約230ドル)以上の収益をあげ、購入者は、現実世界のスニーカーに加えてイーサリアムのブロックチェーン上のデジタル版のスニーカーを入手した。
ナイキは、2022年12月にCryptoKicks iRL(クリプトキックス)と呼ばれるコレクションを発表して以来、NFTが付属するスニーカーを販売している。約900ドルで販売された最初のコレクションは、今ではStockXなどの転売サイトで3000ドルの高値で取引されている。
「ダンクのコレクションは大成功でした」と、2021年12月にナイキに買収されたNFTスタジオのRTFKT(「アーティファクト」と発音)の共同創業者のスティーブン・ヴァシレフは話す。「NFTの市場がまだ落ち込んでいるにもかかわらず、私たちのプロダクトは新たな顧客を呼び寄せています」
NFTはビットコインやイーサのような暗号資産と同様に、ブロックチェーン上で取引されているが、すべてのNFTは独自の価値を持ち、ユーザーにさまざまな特典を与えたり、現実世界のアイテムにリンクさせたりすることが可能だ。また、OpenSeaのような二次市場で売買することもできる。
NFTを取り巻く状況はこの2年間で劇的に変化した。ほんの1年ほど前には、CryptoPunks(クリプトパンクス)や、Bored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)などの著名なNFTコレクションが数百万ドルもの高値をつけていたが、今では最も高価なものでも10万ドルを超えることはごく稀だ。
そんな中、Rektguy(レクトガイ)やBored Apesの発行元のをYuga Labs(ユガラボ)のようなNFTコレクションから生まれた企業は、ビジネスモデルを転換しようと奮闘している。CryptoSlamによると、NFT市場全体の売上高は、2022年の267億ドルから昨年は95億ドルに縮小した。
一方で、NFTブームの余波からは、トークンを最先端のマーケティングに活用し、新規顧客の呼び込みに活用する大手企業が台頭している。
「ナイキがアスリートのための企業であるように、私たちはクリエイターのための企業になろうとしています」とRTFKTの共同創業者のヴァシレフは話す。「私たちはNFTという言葉が好きではありません。ですから、デジタル・コレクティブルズ(収集品)と呼んでいます」