だが、老朽化し、信頼性にも欠けるクズネツォフは、2017年からオーバーホール中だ。もしかすると、1980年代に建造されたこの空母が現役復帰することは二度とないかもしれない。そうなれば、MiG-29KRは本来発着する場所を失ってしまう。
ロシア海軍は2013年以降にMiG-29KRを計24機取得し、うち22〜23機が残存している。その一部について、艦載とは別の使い道を見つけたようだ。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)によれば、ロシア海軍はMiG-29KRの一部をロシア占領下のウクライナ南部クリミア半島に配備している。MiG-29KRがそこから出撃し、ウクライナ軍のボートを探し出して攻撃しているという報告もある。
最新の空対空兵器や空対地兵器を搭載可能なマルチロール(多用途)機であるMiG-29KRは、ロシアがウクライナで拡大して23カ月目になる戦争の18カ月目までは戦闘に参加していなかった。しかし、昨年秋ごろには、ロシア海軍第100独立艦上戦闘機航空連隊に所属するMiG-29KR少なくとも2機が、クリミアのサキ航空基地から出撃するようになっていたらしい。
中量級の戦闘機であるMiG-29KRは重量級のスホーイSu-30SM戦闘機と組み、黒海西部でウクライナ海軍のボートに対する哨戒にあたっていると伝えられる。
ウクライナ海軍はロシアの全面侵攻が始まった直後にフリゲート艦「ヘーチマン・サハイダーチヌイ」を自沈させ、保有する大型艦は1隻もなくなった。その代わり、ミサイルやドローン(無人機)、水上ドローン(無人艇)、小型の高速艇ならたくさんある。
高速艇はウクライナの特殊部隊を輸送し、ロシアの占領地域を襲撃している。爆薬を積んだ無人艇は港湾に侵入し、ロシア海軍の艦艇を攻撃している。