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2015.07.16

ロバート・ゼーリックが語る「第3の矢」の勢いを殺す 日本人の深層心理

ロバート・ゼーリック氏(フォーブス ジャパン3月号より)

ブッシュ政権時代、米通商代表として、時に日本に厳しい姿勢をとったこともあるゼーリックだが、彼は安倍首相の政策こそ世界に必要だと言う。

先日、アメリカの大手企業の会長とランチをとっていると、彼は日本についてこんなことを言った。
「確かに安倍首相の改革には魅力を感じる。しかし、首相の計画とその実行力を信じたとしても、システムは変わらないことが多い。日本のように大きな経済規模でも、成熟し、高齢化が急速に進む国に、どの程度、我々は投資すべきか判断が難しい。むしろ、日本よりやや規模が小さくても、成長の可能性があり、よりオープンな新興国市場に移ったほうがよいのか、迷うのです」

ここに安倍首相が行う改革の課題があるだろう。改革は一夜にしてできるわけではなく、時間がかかり、最後まで遂行できるかどうか。ここが不確かなのだ。
安倍首相の政策パッケージは、経済的 先日、アメリカの大手企業の会長とランチをとっていると、彼は日本についてこん
なことを言った。
「確かに安倍首相の改革には魅力を感じる。しかし、首相の計画とその実行力を信じたとしても、システムは変わらないことが多い。日本のように大きな経済規模でも、成熟し、高齢化が急速に進む国に、どの程度、我々は投資すべきか判断が難しい。むしろ、日本よりやや規模が小さくても、成長の可能性があり、よりオープンな新興国市場に移ったほうがよいのか、迷うのです」

経済的利益だけに重点を置くのではなく、人口減少を前提に、女性の社会進出、規制緩和、企業ガバナンスの改革、海外投資の呼び込みなど、社会構造を変える取り組みとして極めて重要である。金融・財政・構造改革が首尾一貫した戦略的に組み合わさっていて、成功すれば、世界のよい前例になる。

問題は、持続性だ。次のエピソードこそ、日本の今を表している。世界経済を観察しながら、日本の投資がどこに向かうのかを見ていると、日本の経営者たちは私にこう言う。
「我々は、まだ確信がもてない」日本の経営者たちは慎重なのだ。投資判断は慎重で、労働者の賃金についても大企業の一部はボーナスをわずかに増やしたが、消極的だ。 

日本は海外諸国と比べて、地政学的なリスクは小さいし、国内はとても住みやすい国だ。危機感はまったくないといってもいい。歴史を振り返ると、黒船来航、第二次大戦の敗戦、オイルショックなど大きな衝撃から、常に見事に立ち直っている。

安倍首相の課題は、社会と経済を大きく動かすことで、それには首相一人だけでなく、我々すべてが助け合う必要がある。我々も日本の成功を応援しなければならないし、失敗すれば、アベノミクスは円の切り下げとなって、韓国、中国、アメリカな
ど諸外国に軋轢を生じさせるからだ。そう、最大の課題は日本人が慎重になってしまう「心理」にある。私はアベノミクスには大賛成だが、それが実現できるかはわからない。判断できるのは、日本人自身なのだ。

フォーブス ジャパン編集部 = 構成

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