欧州

2024.01.04 11:30

ロシアの最新対砲兵レーダー、配備直後にウクライナ砲兵が破壊

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ウクライナ軍はこれまでに、ロシア軍のGPSジャマー(電波妨害装置)をGPS誘導爆弾で破壊し、ロシア軍の対ドローンジャマーをドローンで爆破した。また、巡航ミサイル撃墜を任務とするロシアの防空拠点を巡航ミサイルで攻撃してもいる

ロシアが仕掛けたウクライナとの1年11カ月に及ぶ戦争では、まるでブラックジョークのような皮肉な結末を迎えた衝突が数多く起きてきた。その最新の事例となる今回の出来事は、話の始まりからオチまでが最速のものの一つとなった。

ロシアのメディアは2日朝、ロシア軍の最新対砲兵レーダー「ヤストレブ-AV」がウクライナに配備されたと報じた。だが数時間後、このレーダーはウクライナ軍の砲兵が同国南部で行った攻撃により爆破された。

皮肉はさらに続く。ヤストレブ-AVは、ウクライナ軍が運用する米製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)からロシア軍の部隊を守るのに役立つはずだった。だが、初投入されたそのヤストレブAVレーダーを破壊するためにウクライナ軍が使ったとみられる兵器はというと……そう、HIMARSだ。ただし、りゅう弾砲から発射された誘導弾による攻撃だった可能性もある。

ヤストレブ-AVの損失は単なる笑い話ではなく、重要な意味を持つ。ウクライナでは、戦いが消耗戦となるにつれ、対砲兵レーダーを狙う大砲の重要性が日ごとに高まっている。

勝機は、大砲とドローン(無人機)の動きがいい側にある。対砲兵レーダーは、飛んでいる敵の砲弾を発見してその砲弾の発射地点を特定し、自軍の大砲が敵に打撃を加えられるようにすることで、優位に立てるのだ。

ウクライナ軍がこの希少なヤストレブ-AVを爆破する数時間前、ロシアは「ミサイル兵と砲兵による戦闘任務の効果的な遂行は、砲撃の効率と戦場での生存性を高める無人航空機の使用とともに、近代的な砲兵偵察装置の使用によっても確保されている」とうそぶいていた。

だが、対砲兵レーダーは極めて高い威力を持つことから、真っ先に標的ともなる。ヤストレブ-AVの配備から1日以内に、ウクライナ軍のドローンがその位置を特定し、HIMARSが射程約92kmのGPS誘導ロケット弾M30/31で攻撃したとみられる。

トラックに搭載された位相配列のレーダーが特徴的な信号を発していたため、ウクライナ軍はヤストレブ-AVの居場所を知っていたというのはあり得る。この信号についてはウクライナの情報機関がマークしていた可能性がある。

元米国防契約管理局(DCMA)品質監査官で、電子戦に詳しいトレント・テレンコは「電子戦の基本として、独特、あるいは低密度で価値の高い電波を発するものは、優先的に標的となる」とX(旧ツイッター)で指摘した

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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