カルチャー

2023.12.23 10:30

小泉今日子も応援 名古屋・今池のミニシアター復活物語に共感が集まるワケ

「名古屋シネマテーク」の元スタッフで「ナゴヤキネマ・ノイ」開館を準備する永吉直之と仁藤由美


永吉は「ビルの大家さんは代々映画興行をされてきて、この映画館を残したい気持ちがあったようです。すると、顔を合わせる度に『映画館はなんとか続けられないの?』『映写施設はスケルトンに戻さず、取っておくことにした。万が一の場合は、自分が責任取るから待ってるよ』などと声をかけてもらいました」、仁藤は「ATMで並んでいたら、突然知らない人から『映画館を続ける方法はないの?』と声をかけられることもあり、新館設立を迷っている間も今池の街に後ろ髪を引かれるような気持ちもありました」と話す。

今池の街で「長く続けていきたい」

さらに2019年に亡くなった名古屋シネマテークの支配人だった平野勇治のパートナー安住恭子も、「会社を作って協力する」と名乗り出た。ナゴヤキネマ・ノイを運営する法人を設立し、2月中旬頃までに開館を目指す。取材では何度も「長く続けていきたい」と永吉は口にしていた。
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そのためにも、細かな仕事のやり方の見直しや経費削減策にも乗り出している。待合のロビーでは持ち込みの飲食は自由にできるが、飲料の自販機をビル共有部分に移して自主管理をやめるほか、クラウドファンディングで集まった寄付金から予約システムを導入し、新たな会員制度をつくる。また以前は毎日営業してきたが、週に1日の休館日を設けることを検討している。
待合のロビー、床や壁をリノベーションされる予定 壁面には上映予定の映画ポスターが並ぶ

待合のロビー、床や壁をリノベーションされる予定 壁面には上映予定の映画ポスターが並ぶ

開館後は、名古屋の救命救急センターを舞台にした、東海テレビドキュメンタリー劇場の最新作「その鼓動に耳をあてよ」(監督・足立拓朗)を公開予定。プロデューサーは「ヤクザと憲法」「さよならテレビ」の阿武野勝彦と土方宏史が務めた。24時間365日「断らない救急」をモットーに、身寄りのないお年寄りも生活困窮者も誰でも受け入れるという現実。さらにコロナ禍で窮地に立たされた救命救急センターのありのままを映し出し、地域医療の近未来のカオスへ誘う。

このほかにもリノベーション前の待合ロビーの壁には、待ち侘びるかのように、2022年の杉並区長選挙で女性区長誕生を追ったドキュメンタリー「映画 ◯月◯日、区長になる女。」のほか、フランスやイタリア映画など、上映予定の作品のポスターが並ぶ。

新たなミニシアターとして注力したいことを聞くと、永吉は「特色は、世の中の風潮や作品とともにだんだんできていくもの。私たちは映画を作れません。選ぶ側としては、国内外の過去の作品から新作まで、それぞれの良さや新たな可能性には敏感でありたい。映画の多様性をより広げられるといいなと思っています」と語る。
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仁藤は「今池の街って、不思議なんです。飲食店やライブハウスがあり、街の中で音楽やお酒やご飯を楽しみ、お客さんが自発的に街と繋がっています。秋恒例の今池まつりは、今池好きな人たちが繋がり、お客さんの一体感が出ているんですよ」と微笑む。確かに街中では「今池ハードコアは死なず」という物々しい文字が目に飛び込んできたが、これは今池まつりでコアなファンが街を盛り上げていく心意気の現れらしい。「映画を見たあとは、今池のお店でご飯を食べ、飲んでいく。そんな自然な繋がりがこれからも生まれていってほしいなと思います」(仁藤)。

名古屋シネマテークの跡地で新しくナゴヤキネマ・ノイがオープンする今池スタービル自体も、個性派な店揃いでディープな名古屋カルチャーの発信地となっている。投げ銭ライブなどが開かれる居酒屋でありアミューズメントスペースを名乗る「大大大」や、50年以上続く古書店「人文書房 ウニタ書店」や人間社の詩歌句の専門書店などが入居する。ここにミニシアターが戻って来る日が待ち遠しい。
硬派な人文科学系、社会科学系が豊富な「人文書房 ウニタ書店」は50年以上続く古書店

硬派な人文科学系、社会科学系が豊富な「人文書房 ウニタ書店」は50年以上続く古書店

今池スタービルに入る飲食店や古書店の看板 個性派の店揃いだ

ナゴヤ・キネマノイを準備中の今池スタービルに入る飲食店や古書店の看板 個性派の店揃いだ

文、写真=督あかり

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