5000円のシンプル支援コースから50万円のオリジナルグッズコースまでさまざまな寄付の仕方があるが、なかでもシアターの席数と同じく、40人限定の特別イベントコース(3万円)は即完売。大島真寿美の小説「ピエタ」を基に、小泉今日子が舞台化し、主演した縁から始まった企画「トリオ・ザ・ピエタ トークと朗読と音楽と」への招待などをリターンに設定した。開催時期の詳細は未定にもかかわらず、大島と小泉のほか、「ピエタ」音楽監督を務めた演奏家、向島ゆり子が出演する特別企画とだけあって、応援者の期待感が込められている。
「失うものはない」新しいミニシアターを始める本当の心境
新館の名前の「キネマ・ノイ」は、映画を意味するキネマとドイツ語で新しいを意味するNEU(ノイ)のこと。ベルリンの壁崩壊後、冷戦の終結を祝う世の中を見つめるヌーヴェルバーグの旗手、ジャン=リュック・ゴダール監督作「新ドイツ零年」(1991年)に、自分たちの心境をなぞらえた。仁藤は「これから新館を始める私たちには、失うものはありません。それを楽観的に捉えているものの、その裏返しで怖さも感じています」と心の内を明かす。永吉、仁藤ともに学生時代に名古屋シネマテークでアルバイトをしたことがきっかけで30年近く、働き続けた。82年の開館当初から法人格がなかったが、2006年から一般社団法人化し運営した。閉館の決断に、二人はどんな思いを抱いたのだろうか。
永吉は「1990年代まではインド映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』(日本公開1998年)の大ヒットなどがあり、作品も充実していましたが、2000年代からはヒット作が減り、長い期間、慢性的に収支がよくない状況が続き、いつ閉館してもおかしくない状況で代表が決めることだと感じていました」と振り返る。仁藤は「面白い作品を上映する場所がなくなってしまうのは、受け入れ難いものでした。ただ、ご覧の通り、施設の老朽化もあり、そのまま続けていくことが困難であることも理解できました」と語る。
ただ二人は閉館まで、片付けや資料整理に追われ、特にその後のことを話し合う時間もなかったという。そんな二人を後押ししたのは、今池の街の人たちや、旧・名古屋シネマテークが入居する今池スタービルのオーナーからの声だった。