アップルは米国で現地時間12月18日、血中の酸素濃度を計測する機能を巡る特許紛争が原因で、Apple WatchのSeries 9とUltra 2の販売を今週から停止すると発表した。
血中酸素濃度の測定機能を巡っては、10月に米国際貿易委員会(ITC)が、アップルが医療機器メーカーのMasimo(マシモ)の特許を侵害しているとして輸入禁止命令を下しており、アップルは今週、これに応じるために販売を停止すると発表した。同社は、apple.comのオンラインストアで21日から、実店舗では24日から、この2機種の販売を中止する。
しかし、このニュースが報じられた直後に、アップルがこれらのモデルの販売継続を可能にするためのソフトウェアの修正に取り組んでいることが明らかになった。ブルームバーグのマーク・ガーマンは19日、アップルが大急ぎで「ユーザーの血中酸素濃度を測定するデバイスのアルゴリズムに変更を加えようとしている」と報じた。
「アップルは、前例のないリスクの高いエンジニアリングの努力に打って出ようとしている」と、ガーマンは述べている。ITCによる禁止令は、バイデン政権が土壇場になって覆す可能性もあるが、25日に発効する予定だ。
アップルは、ソフトウェアに変更を加えることで、特許侵害を回避できると考えている模様だ。しかし、ガーマンが指摘するように、この係争の中心となっている特許の大半は、血液中の酸素量を測定するために皮膚に光を照射する方法などのハードウェア関連のものとされる。
アップルは回避策を提出する準備を進めているが、マシモはソフトウェアの修正では不十分で、「ハードウェアを変更する必要がある」と主張している。ハードウェアを変更するためには長い時間が必要であり、ある情報筋によれば、新たなモデルを生産し出荷するまでには少なくとも3カ月が必要だという。
バイデン政権が拒否権発動の可能性も
一方、バイデン政権がITCの命令に拒否権を発動する可能性もある。2013年にオバマ政権は、一部のアップル製品の米国輸入を禁止したITCの命令に拒否権を発動したが、この時は、アップルを韓国企業であるサムスンが特許侵害で訴えたことが原因だった。しかし、今回アップルを訴えたマシモは、カリフォルニア州を拠点とする米国企業であり、政府は「どちの米国企業の肩を持つかの選択」を迫られることになるとガーマンは述べている。
この騒動がどのように着地するかは、まだ定かではないが、米国でクリスマス前にアップルウォッチを買いたいと思っていて、特にSeries 9やUltra 2を狙っている人は、購入を急いだほうがいいだろう。より手頃な価格のApple Watch SEを買いたい人は、この問題の影響を受けないので心配はない。
さらに言うと、すでに血中酸素濃度のモニタリングが可能なApple Watchを所有している人にも、この問題は影響を与えない。今回の措置は、この機能を持つデバイスの販売を禁止するものだ。
(forbes.com 原文)