国内

2024.01.03 14:00

経営者として一皮むけた真の信頼関係

Forbes JAPAN編集部
井上:週一回以上の頻度でミーティングをしているので、投資家のなかでもいちばん近しい存在だという自負はありますよ。特に、22年夏の資金調達では踏み込んだサポートができたと思っています。思い返すと、バテクは最初に「お金がなくなったからちょうだい」みたいな軽い感じで相談に来て、私は戸惑ったんです。事業計画も立てていないし、それはちょっと違うよねって。

でも、こういうときに信頼関係は試されるものですよね。私はそのとき、バテクがプレイヤーから真の意味で経営者になるいい機会だと思い、あえて厳しいことを言いました。それで、必要な資金の半分を自分たちの力で調達できたら、残りの半分を拠出すると約束したんです。資金調達の環境が厳しくなるなかで、あのときはお互い苦しかったですね。

バテク:事業をつくることが楽しくて、そこに没頭してしまい、事業計画がおろそかになっていたと反省しています。でも、そのときの経験を通じて、多くのことを学びました。

井上:バテクは約束を果たしてくれましたし、ファイナンスを乗り越えた辺りから、たくさんの案件が取れるようになりましたね。経営者としても一皮むけたと感じています。

バテク:この分野では先駆者なので、うまくいかないこともありますが、ラグジュアリーブランドやアーティストとコラボレーションするなど、さまざまな実証実験を進めているところです。ここで成功したモデルをテンプレート化して、各業界に横展開していきたい。注力しているARホログラムは順調に進んでいます。

井上:いい技術をもっているし、応用先も幅広くあって可能性は無限大だと思っています。組織づくりや資金確保の面では、まだまだ我々がサポートできる余地があります。緊密に連携していきましょう。


いのうえ・かなこ◎慶應義塾大学卒業後、大手法律事務所を経てGCAサヴィアンでM&Aアドバイザリー事業に従事。2013年にケロッグ経営大学院を卒業。ボストン コンサルティング グループ、D4Vを経て20年、NEXTBLUEを設立した。

バテク・コラチ◎カルクル共同創業者兼CEO。ドイツ出身。ハンブルク工科大学で機械工学を専攻。卒業後は、同国のスタートアップ企業でのエンジニアを経て来日し、ドイツ系の法律事務所で特許技術者として活躍。2019年にカルクルを創業した。

文=眞鍋 武 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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