トヨタとホンダの強力タッグ キーパーソンはやはりこの人
これまでを振り返って上野氏は、「脱炭素のような大きな社会課題や危機感の共有によって業界が一つにまとまり、ピンチをチャンスに変えられたと実感している」と話す。SF NEXT50はライバル同士である「トヨタとホンダの強い協力関係」あってこその取組みだ。
大きな転機として、コロナ禍の20年8月に4カ月遅れの開催となった開幕戦を、当時トヨタ自動車社長であった豊田章男会長がROOKIE Racingのオーナーとして訪れたときのことがトヨタのオウンドメディア『トヨタイムズ』で紹介されている。レース会場で豊田氏は、「ドライバーにとって意義のあるレースで、魅力もあるのに、おもしろさがまったく伝わってない」と指摘。そして、本田技研工業の八郷隆弘社長(当時)に「もっと魅力あるレースになるよう一緒にやっていきませんか?」と連絡を入れたのだという。
「このカテゴリーの本質を当時の両メーカーのトップが理解してくれていて、それがちゃんと伝わっていないことに対する想いみたいなものが一致し、人材面なども含めフルサポートしてくれた。それがなかったら多分ここまで進まなかった」(上野氏)
成果は、観客動員数にも表れてきたとみられる。柳澤氏は「23年はコロナ禍前まであと一歩というところまできた。特に最終戦では4万3千人と大変多くのお客様に来場いただけた」とコメント。
デジタル施策についても、「Xのインプレッション数が21年比で386%、YouTube視聴回数は1858%と、伸びが顕著に出ている」と自信をのぞかせる。
社会の中でどんな存在を目指すのか?
一方で、長年言われてきた「認知度」は依然として課題として残る。とっつきにくい、特殊な世界といったイメージも拭いきれてはいないだろう。スーパーフォーミュラは社会の中でどんな存在を目指すのか?これについては、近藤真彦新会長やドライバーたちが担っていくことになるのかもしれない。
才能豊かなドライバーたちが専門媒体やSNSなどで積極的に発信する場面も増えており、近藤会長もファン・認知の間口を広げようと取材や自治体へのPRなどを精力的にこなしている。
各施策に加え、SF NEXT50、スーパーフォーミュラの本質や魅力が明快に社会に共有されるようになれば、またこれまでと違った景色も見えてくるに違いない。