まずはSF NEXT50の根幹、CN対応に向けた新型車両「SF23」の導入だ。
車体に、麻由来の天然素材などの使用によって原材料や製造過程でのCO2排出量を約75%抑制した素材を採用し、タイヤは、横浜ゴムが開発した再生可能原料比率33%(DRYタイヤ)の「CN対応レーシングタイヤ」を装着。燃料についても、23年の導入は見送ったもののCN燃料のテストを継続して行なっている。
最高速度300km/h超など、従来の性能を維持しつつ、エンタメ性の向上にもこだわった。空力を見直し、バトルやオーバーテイクシーンが増え、見どころが増しているという。
![SUPER FORMULA](https://images.forbesjapan.com/media/article/68105/images/editor/9cd16a850b715898e646f9f7c53f1c228fe91a67.jpg?w=1200)
目玉アプリ「SFgo」 秘密の裏側も見せる
そして、ドライバーやマシンのあらゆる情報を伝える視聴アプリ「SFgo(SFゴー)」の本格提供を始めた。有料会員登録すると、好きな車載カメラの映像や、車速やギア、ブレーキ、ステアリングの操作から燃料、タイヤの状態といったテレメトリー情報を見ることができ、なんとチーム無線まで聴くことができる。
![SFgo](https://images.forbesjapan.com/media/article/68105/images/editor/d8b69ea3dcedc88ca0d9007c63d5230121b3f0a9.jpg?w=1200)
これらは当然チームやドライバーにとって隠しておきたい情報であり、これまでも極秘とされてきた。激しい抵抗があったが、「スタッツの公開が進んでいるスポーツ界のトレンドやスーパーフォーミュラの現状とともに『ドライバーの走りの凄さをしっかりとお見せして、楽しんでいただこう』と丁寧に伝え、理解してもらった」(上野氏)という。
こうした地道な対話により、「関係者みんなの意識が変わってきた」と長年トップドライバーとして活躍したCERUMO・INGINGの立川祐路監督も語っている。
「今までは『ただ良いレースをしていればいい』と見てもらう視点で考えられていなかったところがあったが、見せるものへと意識が変わった」
SFgoにはその他、ファンがアプリ上で加工した映像を30秒までSNSで発信できる仕組みなども構築されており、JRPマーケティング部長の柳澤俊介氏によると、今後はさらに「NFTやメタバース、ベッティングといった新たなチャレンジも視野に入れたコンテンツ創出やマーケティングの基盤となるプラットフォームに進化させ、チームやドライバーへの収入還元も目指していく」としている。
多様なドライバーラインナップ、人材育成に取り組む
ドライバーのラインナップについても、将来出走台数を増やし、「ベテラン、若手、外国人をバランスよく、そして女性ドライバーも含めた幅広いドライバーが活躍できるレースでありたい」(上野氏)と理想像を描いている。2024年シーズンには、史上初の日本人女性ドライバーとなる、Juju(野田樹潤)選手(17歳)が参戦することが、1月9日に発表されている。
![2023年SUPER FORMULA合同テスト&ルーキー・ドライバーテスト|Juju(野田樹潤)選手](https://images.forbesjapan.com/media/article/68105/images/editor/68724fe9651d23b1ca3f9a5524d27ac61b2eb2a4.jpg?w=1200)
そして、育成が必要なのはドライバーだけではない。
将来のファンもそうだが、業界を支える人材育成のきっかけになればと、こどもの職業・社会体験施設「キッザニア」とのパートナーシップにより、23年全大会でモータースポーツの様々な仕事体験を提供した。
![Out of KidZania in SUPER FORMULA](https://images.forbesjapan.com/media/article/68105/images/editor/fd6a3afb531ad51190382ae53aefb3674274cb14.jpg?h=680)
ドライバーファーストに、走る実験場。独自価値を追求していく
モータースポーツと言えば、マシンの開発競争のイメージが強い方も多いかもしれないが、スーパーフォーミュラは、ダラーラ製の車体に横浜ゴム製のタイヤ、性能を揃えたトヨタ製・ホンダ製のエンジンを搭載したマシンで争われる「世界一のイコールコンディションレース」(上野氏)だ。ドライバーのテクニックや体力、精神力、調整力が勝敗を決める最大の要素であることから、「ドライバーファースト」をコアバリューに掲げ、全事業を展開している。
また、長年モータースポーツはホンダ創業者の故本田宗一郎氏の名言「走る実験室」のように、車や部品、通信映像などの技術開発の場と位置付けられてきた。
スーパーフォーミュラは今後さらにCN対応はもちろん、DX・エンタメ面も含め、「新時代に対応した実験台・実験場となっていく」(上野氏)という。
![上野禎久◎株式会社日本レースプロモーション(JRP)代表取締役社長。1964年9月19日生まれ、三重県桑名市出身。1988年鈴鹿サーキットランド(現ホンダモビリティランド)に入社し、レース運営、広報、マーケティング等に従事した後、2018年12月にJRPへ出向。2019年取締役スーパーフォーミュラ事業本部長、2021年12月に「SF NEXT50」プロジェクト推進の使命を担い、現職就任。](https://images.forbesjapan.com/media/article/68105/images/editor/1c1663dffb648c87a0fc5ba411e9fca0c18b4b9e.jpg?w=1200)