「規模も質も30倍」世界の非営利の衝撃
Goalkeepersとは、SDGs達成を加速させるためのビル&メリンダ・ゲイツ財団(以下、ゲイツ財団)によるキャンペーンだ。国連総会に合わせて、毎年ニューヨークでイベントも開催される。ビル・ゲイツとメリンダ・フレンチ・ゲイツがホストを務め、7回目となる本年度はケニアのウィリアム・ルト大統領、ベルギーのアレクサンダー・デ・クロー首相、日本の岸田文雄首相ら各国の要人、そして400名を超えるチェンジメーカーが世界中から結集。まさに、チェンジメーカーの世界的祭典である。ニューヨークに招かれた伊藤が訪れたイベントの会場はJazz at Lincoln Center。Central Parkに隣接するマンハッタンの中心地だ。
「本当に、フェスみたいだったんです」
帰国した伊藤が会場の動画を見せながら、まず興奮気味に語ったのは、そのイベントの盛り上がりだった。
資料をもとに、各国要人が順にスピーチをする──そんな「SDGs」や「グローバルヘルス」を扱う既存の国際会議と一線画すGoalkeepersの雰囲気に、伊藤はまず驚かされた。スポットライトを浴びるのは、同領域を牽引してきたビル・ゲイツ世代のシニアだけでなく、社会課題の最前線で活躍する次世代のリーダーたち。参加者がインスパイアされる機会とするために、動画、音楽、パフォーマンスを最大限に活用する。全ては次世代の心に火をつけ、ムーブメントを起こすために。イベントは、エンタテイメント性を強く意識されたものだったという。
「とにかくその規模に驚きました。アメリカのソーシャルセクターはその規模も質も、日本の30倍という印象で。参加するリーダーたちを支えるセクターの層の厚さが、あまりにも違いました」
ソーシャルセクターを支える個人寄付額は、日本が1兆2126億円であるのに対して、アメリカは34兆5948円(ともに2020年)で、約30倍。その差がそのままソーシャルセクターの規模と質、そしてイベントにも反映されているというのが伊藤の見解だ。さらに、そのソーシャルセクターのリーダーたちへの評価も日本とは異なっていた。
「Goalkeepersで感じたのは、社会起業家やアドボカシーリーダーたちへの強いリスペクトです。ビル・ゲイツや各国の首相が数時間にわたって、彼らのプレゼンに真剣に耳を傾けている事実に驚きました」