経済・社会

2023.12.18 19:30

ゲイツ財団主催 「チェンジメーカーの祭典」の衝撃

山本 智之

世界に非営利のリーダーを送り出したい


「グローバル・ゴールキーパー賞」を受賞し、ビル・ゲイツと握手を交わす岸田文雄内閣総理大臣

「グローバル・ゴールキーパー賞」を受賞し、ビル・ゲイツと握手を交わす岸田文雄内閣総理大臣

今回のGoalkeepersへの参加で、伊藤が「PolPoliをグローバルなプラットフォームにする」以外に、やると決意したことがあった。それはPolPoliの活動によって、この国際的な舞台に日本からの民間リーダーを1人でも多く送り出すことであった。

Goalkeepersでは、SDGsの達成に貢献した世界のリーダーへ「グローバル・ゴールキーパー賞」が贈られる。毎年恒例の表彰で、今年度は岸田首相が受賞。G7広島サミットでの保健分野を中心に発揮した指導力、途上国への新型コロナウイルスのワクチン供与などが、功績として認められて、壇上でのスピーチもおこなわれた。伊藤はこう振り返る。
「とても誇らしかったです。しかし、岸田首相以外の日本人の登壇者はいません。日本人の民間のリーダーでの登壇者がおらず、イベント会場にもほとんどいない。日本のプレゼンスの欠如を感じましした」

伊藤の紹介で、NTDs Youthの会・代表の轟木亮太も参加していた。轟木は「NTDs(Neglected Tropical Diseases 顧みられない熱帯病)」撲滅に向け、研究と政策提言に取り組む社会起業家だ。ルールメイカーを育成する PoliPoli主催の「Reach Out Project」のメンバーであり、団体としてゲイツ財団の支援も受けている。「僕ではなく、轟木さんのような日本のリーダーにどんどん登壇してもらいたい」と、民主主義の黒子を自称する伊藤は言う。

「PoliPoliのサービス、プログラムを活用して、社会を変えようとする民間のリーダーたちが、来年以降にあの場所で表彰されるためのサポートこそ、僕たちの仕事です」

世界との差は何か。前述のように、伊藤は挑戦者を下支えするソーシャルセクターの厚みにあると考える。問われているのは、非営利のエコシステム構築のロードマップだ。

「ヒト、モノ、カネ、そしてモメンタム。全てが足りていないのですが、センターピンはカネではないでしょうか。そこから非営利のエコシステムがスケールするサイクルが回り、始めると考えています」

既にPoliPoliは、策を講じている。23年9月、民間発の政策立案を後押しする寄付基金事業「Policy Fund」をローンチした。まずはIPO経験のある起業家たちの資金で基金を組成することからはじめ、群馬県との共同プロジェクトなど、現在までに4つの基金を立ち上げている。

立ち上げ以後に寄付したいというオファーが多く寄せられたこと。個人だけでなく、財団、資産管理会社、証券会社等からの問い合わせがある。Policy Fundは、立ち上げの勢いを活かして、2024年末には数億円、5年後には総額100億円規模の巨大基金への成長を目指すという。

「エコシステムをスケールさせるためにも、Goalkeepersのような、非営利の祭典を日本でも必ずやりたいです。できるのは、僕たちしかいません」

非営利の民間の新リーダー登場を、支援・賞賛・加速させる、日本にまだないエコシステムの創出へ。その大いなるヒントが、ニューヨークにはあった。

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