日本にはいない、アドボカシーリーダーたち
海外ではファームリンクのように、課題解決に向けて非営利・民間で社会に対してムーブメントを起こす存在は「アドボカシーリーダー」と呼ばれている。一方で、日本にはアドボカシーリーダーと分類できるプレイヤーがほどんどいない。なぜか。伊藤はこう分析する。
「構造的な問題だと思います。日本は伝統的に”お上文化”。社会問題の解決は全て政府・行政が担ってきた歴史があり、民間からその解決に取り組む発想がなかった。だから、政策を軸にして社会課題解決をする、海外のアドボカシーリーダーに該当する民間のリーダーがほとんど存在しません」
一方、Goalkeepersにはさまざまな課題に挑むアドボカシーリーダーたちはいるが、伊藤たちPoliPoliのようなスタートアップはいなかった。
「現状、日本でチャレンジしたい人材の多くはスタートアップするのですが、海外にはスタートアップ業界に限らず、挑戦者の多様な受け皿があると感じました。その一つが非営利であり、日本では起業家になるような人材の一部が、アドボカシーリーダーというキャリアを選択しています」
では、会場に世界中から集まったアドボカシーリーダーをはじめとするチェンジメーカーに、伊藤たちが運営する政策共創プラットフォーム「PoliPoli」はどう受け止めたのか。
「ほぼ全員が『ポリシーメイキング・プラットフォーム』なんて、聞いたことがないといった反応でした。アドボカシーが一般化している国からの参加者には『アドボカシーのためのプラットフォーム』であることは理解できるが、そんなサービスは存在しないと言われました。一方で、アフリカをはじめとした途上国では、政策共創の土壌となる、政府が国民の声を聞く意向が全くない実情を教えられました。その現状を打破していくためにもPoliPoliに進出してほしい、日本とコラボしたいという声をたくさんのチェンジメーカーからかけられたのが、忘れられません。絶対にやりたいです」
このサービスが持つ独自性こそ、伊藤がGoalkeepersに招かれた最大の理由である。伊藤はイベントへの招待のみならず、Goalkeepersのコミュニティにも選出された。選ばれるのは、次世代のリーダーに限らず、SDGs達成を推進するソーシャルセクターで活躍する世界中の全てのリーダーたち。このコミュニティへの選出は、日本人初であるという。
ゲイツ財団日本常駐代表の柏倉美保子は選出の理由を、次のように説明する。
「政府との関わり方、政策を変えることは、社会のあり方を良い方向に変える上で、非常に重要なポイントです。若者の声を政治に届けていくPoliPoliの実践は、世界的にも類のないモデルです」