それから数年後の2017年、ナスダックに上場したOktaはパンデミックを追い風に業績を伸ばし、最新の決算報告では5億5600万ドルの売上を計上する、時価総額115億ドル(約1兆7000億円)の大手に成長した。世界の従業員数が約6000人の同社は、2020年に日本法人を設立。NTTデータやメルカリ、DeNAなどの大手を顧客としている。
マッキノンに話を聞いたのは、Oktaが毎年、本拠地のサンフランシスコで開催する年次イベント「Oktane」でのことだった。会場は、スティーブ・ジョブズが2007年に初代iPhoneを発表した場所として知られるモスコーニセンター。数千人の関係者がつめかけたキーノートのステージに立った彼は、人工知能(AI)を取り入れた新たなソリューションの「Okta AI」を発表すると同時に、創業から15年の歴史を振り返った。聴衆の中には、妻の姿もあった。15歳になる娘とは今年の夏、テイラー・スウィフトのライブを見に行ったという。
あなたの成功の秘密はという質問にマッキノンは「それは、優れたサーファーと同じことかもしれない」と答えた。起業家は、波をつかまえようとするサーファーと同じように、最初の2年か3年の間、サーフボードの上に腹ばいになって必死で水を漕ぎ続ける。そして運が良ければ、大きな波が来てその波に乗ることができるけれど、途中でやめてしまったり、タイミングを見誤ってしまった起業家にチャンスは無い。
「大きな波が来てからでは遅すぎるんです。ライバルよりもずっと早く、沖に出ていなければならないんです」とマッキノンは語った。
順風満帆にも見えるOktaだが、近年はセキュリティ関連の問題にも直面している。10月には顧客のサポートシステムがハッカーによる侵入を受け、顧客がアップロードしたファイルを閲覧されたと発表し、株価を急落させた。2024年はその真価が問われる年になりそうだ。