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2023.12.10 13:00

「抵抗の枢軸」の一翼、紅海で暴れまわるフーシ派とは何者か

遠藤宗生

2023年11月20日、紅海のイエメン沖の公海で、輸送船ギャラクシー・リーダーを乗っ取ったイエメンの反政府武装組織フーシ派の戦闘員ら。フーシ派が撮影した動画より(Houthi Movement via Getty Images)

米政府は先週、イエメンの反政府武装組織フーシ派を金銭面で支援しているとして、個人と企業からなるネットワークに新たな制裁を科した。フーシ派はここ数週間、紅海で商船などにミサイルやドローン(無人機)による攻撃を繰り返し、米軍の艦艇が対応に追われている。

イランとのつながり

フーシ派はイスラム教シーア派の分派であるザイド派の武装組織で、イエメンで1990年代に結成された。20年近くにわたりイエメン政府と内戦を繰り広げ、2014年に掌握した首都サヌアを含め、イエメンで広範な領域を実効支配する。

フーシ派と、シーア派の大国イランは、イスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアとの対立という点で利害を共有する。イエメンではイランがフーシ派、サウジがイエメン政府をそれぞれ支援し、地域での影響力拡大を狙う両国による代理戦争の様相を呈している。

フーシ派とハマスは、イラン主導のネットワーク「抵抗の枢軸」のメンバーでもある。抵抗の枢軸はイエメンやシリア、レバノン、ガザ、イラクのイスラム組織や政府で構成されている。シーア派一色ではなく、ハマスのようにスンニ派の組織も含まれる。

イスラエルのすぐ北のレバノン南部で活動するシーア派組織ヒズボラも、抵抗の枢軸の一角を担う。ヒズボラはイスラエルとハマスの今回の紛争勃発後、イスラエルを越境攻撃し、イスラエル軍もヒズボラの拠点を攻撃するなど応酬が続いている。

フーシ派はハマスへの連帯を示し、イスラエルに向けてミサイルも発射している。「米国に死を、イスラエルに死を、ユダヤ教徒に呪いを、イスラムに勝利を」がフーシ派のスローガンだ。

商船を相次ぎ襲撃

フーシ派は先月、イスラエルの富豪とつながりがあるとされ、日本郵船が運航する輸送船ギャラクシー・リーダーを乗っ取った。イスラエルとハマスの紛争に呼応した動きとみられる。ギャラクシー・リーダーは現在、フーシ派が支配するイエメン西部ホデイダの港に移され、乗組員は拘束されている。

今月6日には、米海軍の駆逐艦メイソンが、自艦に向かって飛んできたフーシ派のドローン1機を撃墜した。3日にも、バハマ船籍の貨物船ユニティー・エクスプローラーからの救難信号に対応していた米海軍の駆逐艦カーニーが、フーシ派のドローン3機を撃墜していた。ユニティー・エクスプローラーとほか2隻の商船はこれに先立ち、イエメンのフーシ派支配地域から発射されたミサイルで攻撃を受けていた。

メイソンもカーニーも損傷はなく、乗組員に負傷者も出なかった。ドローンが米軍艦艇を狙って意図的に発射されたものだったのかは不明だが、フーシ派はこれまでに、紅海での攻撃の主要目標はイスラエル関連の船舶だと明言している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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