11月3日はウクライナの「ロケット部隊・砲兵の日」と「工兵部隊の日」だった。ウクライナ大統領府が記念に公開した公式写真には、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領らとともに、さまざまな戦闘工兵装備も写っていた。
その1枚に、米国製のアサルト・ブリーチャー・ビークル(ABV)1両の姿もあった。ABVはM1エイブラムス戦車の装甲車体に、地雷などを掘り起こすプラウ(鋤)やドーザーブレード用のマウント、地雷を爆破処理する爆索(爆薬付きロープ)の発射機などを取り付けた、重量55トンの地雷・障害物除去車両だ。
乗員2人、1両400万ドル(約6億円)のABVは、埋設された地雷を掘り起こして安全に爆発させたり、壕を埋めたり、対戦車用の盛り土を崩したりできる。乗員は車両の厚い装甲で守られるので、乗ったまま作業可能だ。開削した場所は目印に小さな旗が立てられ、そこを戦車やその他の戦闘車両が安全に通過できる。
地雷などを除去できる工兵車両にはいろいろな種類がある。ロシアがウクライナでの戦争を拡大した2022年2月時点で、ウクライナ軍の工兵部隊は旧ソ連製の障害物除去車両を保有していた。
戦争が年をまたいで続き、ウクライナ軍が南部で反転攻勢を準備するなか、西側の支援国はウクライナに数十両の障害物除去車両を供与した。それには、フィンランドやノルウェー、韓国で製造された最高峰の車両も含まれる。
ところが奇妙なことに、米国のABVは、西側が供与を表明した装備一覧には名前がなかった。米国はウクライナに工兵車両や支援車両も大量に供与してきたが、ABVは除外していたようだった。米陸軍は最近、米海兵隊からABVを数十両譲り受け、これらはすべて陸軍にとって余剰分となっていたはずだというのに。
ABVは障害物除去車両としては最も防御力が高く、最も汎用性が高い部類に入る。地雷除去専用車やブルドーザー、掘削機など、汎用性の低い車両なら4〜6台必要になる作業を2両でこなせる。
「現場の指揮官たちは(ABVは)現在使用している、あるいはこれまで使用してきた装備よりも防御力が高く、障害物を処理する地点の車両数も減らせると話しています」。ABV用のプラウを製造している英ピアソン・エンジニアリングの担当者、ランダル・フラックはそう述べている。