中国企業の香港への流入は当初、外資企業の撤退の影響を相殺していた。だが、今では中国企業の流入すらなくなっている。香港はもはや中国本土と世界をつなぐ窓口としての役割を果たさず、単に中国の一部となったため、中国本土に拠点を置く企業は香港に地域本部や事務所を置くメリットを見いだせなくなった。上海や北京など本土のビジネス拠点にとどまった方がいいのかもしれない。
香港の株式市場の動向は、企業撤退の影響を浮き彫りにしている。トレーディング・エコノミクスのウェブサイトで入手可能なデータによると、現在の香港市場の総資本は約4兆ドル(約603兆円)相当で、2019年の水準を40%ほど下回っている。新規株式公開による調達額は2020年に520億ドル(約7兆8500億円)相当だったのが、今年はこれまでのところわずか35億ドル(約5300億円)だ。取引所を運営する香港証券取引所(HKEX)によると、1日の取引高は現在140億ドル(約2兆1130億円)前後で推移しており、こちらも2年前から40%減少している。HKEXの株価は2021年以降下落し、今年だけで約15%下落している。
世界有数の金融センターとビジネス拠点という香港の地位が急速に失われている。この損失は、すでに苦境に立つ経済と不安定な財政状況に打撃を与えるだけだ。ある意味、中国政府が以前は隠された手段で及ぼしていた政治的支配を単にあからさまにするために、宝である香港を破壊するのは不思議この上ない。だが、世界的な影響力と経済的支配を求める中国共産党の長期的な追求とは相容れなくても、それが習近平の指導部の下でのやり方だ。
(forbes.com 原文)