北米

2023.11.09 10:30

次期大統領選に向けてバイデン政権にとって「明るい兆し」となった米地方選挙

安井克至

lev radin / Shutterstock.com

米国時間11月7日に行われた地方選挙で、米民主党は注目の州で勝利を収め、中絶の権利が2024年の選挙でも強力なメッセージになりうることを示した。ジョー・バイデン大統領がドナルド・トランプとの対決で敗れるという厳しい世論調査が続いていた民主党に明るい兆しとなった。

ケンタッキー州知事

民主党のアンディ・ベシア州知事は、予想を超える5ポイント差で、共和党が強いケンタッキー州で2期目の再選を果たした。トランプの支持を受けた共和党のダニエル・キャメロン州司法長官を破っての勝利は、べシア知事が全米で最も人気のある州知事であるとの評判を確固たるものとした。ケンタッキー州の知事選は、過去5回の大統領選でどの政党が勝利するかを占うものとされた。べシアとバイデンの不人気ぶりを結びつけようとするキャメロンからの攻撃にもかかわらず、ベシアは2019年を上回る12郡を制した。

バージニア州議会

民主党は下院を奪還した。共和党のグレン・ヤングキン知事の保守的な政策に打撃を与え、中絶を制限しようとする動きに対して強いメッセージとなった。

オハイオ州憲法改正案

オハイオ州は、中絶の権利を憲法に明記する法案を可決した最初の共和党主導の州となった。これは、ロー対ウェイド判決を覆したことに対する怒りが、民主党にとって引き続き強力なメッセージとなり、有権者の投票率を押し上げる可能性があることを示している。 

ペンシルベニア州最高裁判所

民主党のダニエル・マカフェリー州控訴裁判所判事が、共和党のキャロリン・カルッチ判事を6ポイント差で破った。これにより銃規制、人工妊娠中絶、投票権をめぐる裁判が審議される中、民主党の多数派が強化される。

この選挙を受け「投票するのは有権者で世論調査ではない」と、バイデン/ハリス・キャンペーンは資金調達のためのメールに書いた。

今回の選挙の結果を、2人の不人気候補(バイデンとトランプの支持率はともに40%前後)が争う可能性が高い2024年の有権者の行動と重ね合わせるのは難しい。上院では、民主党が2議席という僅差の多数派を維持するために苦しい戦いを強いられる。しかし、共和党の内紛が度重なる混乱を生み出している下院では、民主党が5議席を獲得して過半数を奪還する確率が高い。

とはいえ、7日は米共和党にとって悪いことばかりではなかった。ミシシッピ州の共和党テイト・リーブス知事は、民主党のブランドン・プレスリーの挑戦を5ポイント差で退けて2期目の当選を果たした。また、ニューヨーク州サフォーク郡の行政官にはエド・ロメインが20年ぶりに共和党員として選出された。

今回の地方選挙は、民主党の2022年中間選挙での連勝を継続するものだ。中間選挙では、民主党は予想を上回り、トランプ支持の候補者を抑えていくつかの接戦の上院選に勝利し、下院選でも予想より良い結果を残した。この結果は、バイデンの低い支持率や、6つの激戦州のうち5つでトランプ支持率がバイデンを上回ったというニューヨーク・タイムズ/シエナの世論調査など、党内の警戒感を高めた一連の調査への反論になる。マンハッタンで民事詐欺事件の裁判中のトランプは、午前1時過ぎにリーブズを祝福した以外、ほとんど沈黙していた。

forbes.com 原文

翻訳=上西雄太

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