ビジネス

2023.11.17 18:00

「地域ビジネス第2世代」が目指す、ハッピーシナリオの世界輸出

石田 遼|NEWLOCAL CEO

都市のスマートシティ事業を経て、地方の不動産をもとにしたまちづくり企業を創業。「幸せな天職」にめぐりあえたと語る石田遼を変えたのは、地方の「かっこいい経営者」たちだった。


「今面白いことが起きているのは地方です。昔なら東京で起きていたような面白いことが、今はいろいろな地域で起きている。そんな地域を訪れ、アイデアを考えて実行する。これ以上幸せな仕事はないんです」

充実した笑顔で語る石田遼は、不動産開発を中心にまちづくりを手がけるNEWLOCALのCEOだ。22年7月、同社を設立し、東京・日本橋のオフィスを拠点に全国各地を飛び回る。その前は、17年に自ら設立したスマートビルのIoTサービスに携わっていた。

「自分で設立して経営している会社なのに、違和感を感じるようになりました。都市のビルの生産性を数%改善させることは、世界にどれだけのインパクトがあるのかと疑問に感じ始めたころ、地方の魅力的な経営者に会いました」

コロナ以降、毎週末のように国内のいろいろな地域を訪れるようになり、地方の経営者たちの東京とは違うリーダーシップや全人格的な魅力に惚れ込んだ。ただ、課題も抱えていた。

「例えば、野沢温泉は冬になれば客も来るし夏は休めばいいと言われる。そこで、通年客が来るまちづくりを一人でするのは辛い。でも世界的に降雪量は減少傾向でいつまで雪が降るのかわからない。将来のために何かしないといけないと気づきながら、孤独な戦いをしている人が多いんです」

自分は日本人として世界に何かインパクトを与えたい、そう考えていた石田にとって、地方でのチャレンジの意義は大きかった。50年までに世界の4分の3の国は人口減少すると言われている。「人口減少の世界で、初めてのハッピーシナリオを描けないだろうか」。自分には地元がないからこそ、複数の地域で再現性のある成功モデルをつくればいいと気がついた。

NEWLOCALは外部からアイデアとお金、人を集め、地元のキープレイヤーと合弁で地域会社を設立し、複数の地域事業を経営する。長野県野沢温泉村、秋田県男鹿市、長野県御代田町で展開し、今後5年で10カ所に増やす計画だ。

「自分は地域ビジネスの第2世代」と語り、スピード感とスケーラビリティ、再現性など、従来の地域ビジネスになかった要素を持ち込むことを意識する。23年には約8000万円を調達した。

「今までと同じことをしても、日本の未来は変えられない。リスクマネーを使って、ベンチャー経営のような考え方が必要です。地域特化ファンド設立や、成功モデルの世界輸出も夢ではないと思うんです。いまの気持ちは、プレッシャーが5%、ワクワクが95%です」


いしだ・りょう◎1986年、東京都生まれ。東京大学大学院で建築・都市設計を専攻。卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて企業・政府の戦略策定・実行支援。2017年にMYCITYを設立。22年、NEWLOCAL創業。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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