そんな中、さまざまな企業が、スマートフォンなどのデバイスが作成した画像に、変更不可能なかたちでコンテンツの出所に関する詳細情報を埋め込む技術を開発している。このデータはハードウェアレベルで保存されるため改ざんが難しく、それが本物なのか、AIが生成したものなのかを容易に識別可能にする。
クアルコムのカメラ担当バイス・プレジデントであるジャッド・ヒープによると、この方法は、画像を区別するための最も確実でスケーラブルかつ安全なものだという。同社は10月24日、最新のチップセットである「Snapdragon 8 Gen 3 Mobile」を採用したサムスン、シャオミ、OnePlus、モトローラなどのスマートフォンが、画像が作成された瞬間にコンテンツのクレデンシャル(認証情報)を画像に埋め込むことができると発表した。
また、ドイツのカメラメーカーのライカも26日、同社の新たなカメラがすべての写真に同様の認証情報(撮影者の名前や撮影場所や時間)をデジタルスタンプすると発表した。
これらの2つの発表は「C2PA(コンテンツの来歴と真正性のための連合)」と呼ばれる、より大きな業界全体の取り組みの一環だ。この連合は、アドビやアーム、インテル、マイクロソフトなどの大手に加えTruepic(トゥルーピック)というスタートアップが結成したもので、コンテンツのオリジナリティと履歴を証明するための世界的な技術標準を開発することを目的としている。
C2PAのアンドリュー・ジェンクス会長は、画像にメタデータを挿入するハードウェアを使用することが、完璧なソリューションではないが、脆弱な電子透かしよりも安全だと述べている。
「ファイルが完全なものである限り、メタデータは保たれる。編集を加えた場合に、メタデータが削除される場合もあるが、これが今ある最善の方法だ」とジェンクス会長は述べている。
クアルコムの新たなチップセットは、C2PAのパートナーで、銀行や保険プロバイダーがコンテンツの検証に使用するツールを開発したトゥルーピックの技術を使用している。この技術は、写真の撮影時間や場所などの画像のメタデータを暗号化し、各ピクセルにバインドする。また、AIモデルが作成した画像の場合は、どのモデルとプロンプトが使用されたかを記録する。
ファイルがインターネット上を移動し、編集または変更されると、それがデジタル署名された「クレーム」のかたちでメタデータ内に追加される。画像がC2PAのコンテンツ認証に準拠していないデバイスで編集された場合でも、編集内容がメタデータに記録されるが「署名なし」または「不明」の編集として扱われる。