乳児用ミルクに続いて用いられるフォローアップミルク、トドラーミルクといった「年長乳幼児用ミルク(OIYCF)」は、粉ミルク、砂糖、植物油などを成分とし、脳の発達を促したり免疫機能を高めたりするなどとうたわれている。
だが米国小児科学会は新たなリポートで、栄養面での問題に関連し、こうした製品で紛らわしい宣伝広告がされている点にも疑問を呈した。フォローアップミルクやトドラーミルクは、育児用ミルクも手がけるメーカーが製造し、店頭でも同じ棚に置かれることが多く、メーカー側は育児用ミルクに続いて必要な「次のステップ」の製品として売り込んでいる。
米国小児科学会は、フォローアップミルクやトドラーミルクの宣伝広告では、それが乳児用ミルクとは別物であることを明確にするよう勧告。また、こうした商品は、英語で粉ミルクを指す「フォーミュラ」ではなく「乳幼児用飲料」のような表記に改めるべきだとも訴えている。
米国では生後12カ月までの乳児用ミルクについては、乳児にとって唯一の栄養源として栄養面の条件を満たすことが法律で義務づけられている。だが1〜3歳ごろ用とされるトドラーミルクなど、それ以降の年齢の乳幼児を対象とした乳幼児用ミルクはまったく規制されていない。
WHO「母乳の代替には適さず」
年長乳幼児用ミルクをめぐっては、世界保健機関(WHO)も2013年、「不要」であるばかりか、生後6カ月以降の乳幼児に母乳の代わりとして用いるには「不適当」だとの見解を示している。たんぱく質が多すぎる一方で、十分な成長と発達を維持するには亜鉛や鉄、ビタミンB、必須脂肪酸が不足しているという。2020年に発表された研究によると、トドラーミルクの米国での販売額は2015年時点で9200万ドル(現在の為替レートで約138億円)と、2006年から133%増えていた。WHOも2016年のリポートで、トドラーミルクの世界全体の売上高は年8.6%伸び、母乳代替品分野で最速のペースで成長していると紹介している。
WHOによると、1歳を過ぎた乳幼児用の母乳代替製品を明確に制限している国は世界全体で44カ国にとどまるという。規制が未整備ななか、メーカー側は多くの場合、乳児用ミルクとフォローアップミルクやトドラーミルクを同じ製品ラインで販売し、その中のある商品で別の商品を販促する「クロスプロモーション」を展開している。WHOは、こうした慣行は混乱を引き起こしているとみており、乳幼児に「栄養面で不十分」な食品が与えられ、その健康を危険にさらしかねないと警鐘を鳴らしている。
米ニューヨーク大学グローバル公衆衛生大学院のジェニファー・ポメランツ准教授も2018年、トドラーミルクは「不要で、栄養価の高い食事を損ないかねないにもかかわらず、メーカー側はこうした製品のマーケティングを拡大している。だとすれば、表示を明確で透明、正確なものにするのが重要だ」と述べている。
(forbes.com 原文)