というのも、T-90の損失が急増しているのは、ロシアのウクライナ侵攻が21カ月目に突入するいま、前線に展開されているT-90が増えていることと関係しているとみられるからだ。ロシア軍がT-90をますます失っているのは、総数が増えているためだ。
100パーセント確かではないが、T-90の配備が急増しているとすれば、それはこの戦争での戦車の損失が2100両を超えるロシア軍の機甲部隊の奇妙な配置を表している。2100両という数は、2022年2月の侵攻時にロシア軍が投入していた戦車の3分の2にあたる。
ロシア軍はあまりに多くの戦車を失ったため、製造から50〜70年たつT-72ウラルやT-62、T-54/55戦車を引っ張り出してすぐさま戦線に投入するより他はなかった。そうした戦車には往々にして照準機器や射撃統制、装甲などの大幅な性能向上は施されていなかった。
だが、古い戦車は一時しのぎのものだ。ロシアの産業界が戦時体制をとり、かつて頼っていた輸入ものの高品質な電子機器に対する外国の制裁強化に対応する間の応急処置だ。
ロシアはこの2年ほど戦車の生産を増やそうとしてきた。そしてその取り組みはついに実を結びつつある。制裁対象となったフランス製の光学機器に国産のものが取って代わりつつある。また、ゼロから戦車(T-72B3MとT-90M)を製造する工場は以前はスべルドロフスク州のウラルバゴンザボード工場だけだったが、現在シベリアのオムスクトランスマッシュ工場もT-80BVMの生産に向けて設備を一新している。