T-90の損失の急増はロシアの大量虐殺的な戦争にとって良いニュースだと考えるのは甘い見方だ。だが、ロシアの戦車産業がとっている戦時体制が徐々にではあるが、うまくいっていることを、ウクライナにとって不吉な展開以外の何物でもないと考えるのは難しい。ロシア軍が配備できる代替戦車が70年前のT-54Bだけなら、ウクライナ人にとってもっと受け入れやすいだろう。
最も不吉なのは、侵攻が始まって2年近く経つが、ウクライナの主力の戦車工場であるハルキウ州にあるマリシェフ工場がいまだに新型戦車を生産していないことだ。確かに、この工場では旧ソ連製のT-64やT-72、T-80を再び使えるようにしたり、改修や修理を行っている。だがこの30年間、新しい戦車を1両も生産していない。ウラルバゴンザボード工場やオムスクトランスマッシュ工場のように戦時体制をとる気配もない。
そのため、ウクライナ軍の戦車部隊は同盟国頼みだ。ウクライナ軍が受け取ることができる新型、あるいは新型に近い戦車は、同盟国が自国の在庫から供与するか、現在稼働している生産ラインから引っ張ってくるものだけだ。
これまでのところ、外国からの供与はわずかだ。少なくとも、ドイツのレオパルト2、英国のチャレンジャー2、米国のM1エイブラムスといった西側戦車に関してはそうだ。ウクライナ軍はわずか85両のレオパルド2、14両のチャレンジャー2、31両のM1を手に入れている。ロシアのウラルバゴンザボード工場は、ウクライナが保有する近代的な西側諸国製の戦車の総数に匹敵するT-90Mをわずか6カ月で製造することができる。
(forbes.com 原文)