欧州

2023.10.10 12:30

ロシアT-90戦車の損失増加は「新規生産分の投入」が増えたから

部外者にとって、そうした工場が新型の戦車や改修された戦車をどのくらい生産できるかは推測の域を出ない。米メディアのCNNは4月に、ウラルバゴンザボード工場だけで月に推定約20両の戦車を納入していると報じた。だがCNNの報道の数週間前にウクライナの軍事専門サイト、ディフェンス・エクスプレスは、ウラルバゴンザボード工場やオムスクトランスマッシュ工場、そして改修されたさまざまな作業場が合計で月に90両の戦車を納入できる可能性があると報じた。

もしディフェンス・エクスプレスの数字が正確であれば、ロシアの産業界は毎月、損失をほぼ補うだけの新型の戦車や改修された戦車を完成させていることになる。

最も古いT-62やT-54/55を含む改修された戦車は、既存の車台や砲塔に頼っているため、数に限りがある。これにより、納入が2022年後半にピークを迎えて以来、冷戦中期に生産され、再び活用されたこれらの戦車の全納入台数に占める割合は減少していると考えられる。



損失がその証拠だ。大雑把に言えば、軍はモデルごとの配備数にほぼ比例して戦車を失うはずだ。戦車にはさまざまな型式があり、備わっている能力の違いにより型式間で残存率が異なるかもしれないが、そのような違いが問題になるのは実際にはほんのわずかだ。

詳細をみると、ロシア軍の古いT-62の損失は2022年10月にピークに達した。改修型のT-80の損失のピークは今年6月だ。そして今、T-90の損失はピークに達している。重量53トン、乗員3人のこの戦車をロシア軍は計約60両失っており、そのほとんどがここ数カ月での損失だ。

破壊され、鹵獲(ろかく)されたT-90の数は、ロシア軍が侵攻前に保有していたT-90のおよそ15%だ。だが、ここには新たに生産された分は含まれていない。ウラルバゴンザボード工場は2022年初めから数百両のT-90を新たに生産する時間があった。
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翻訳=溝口慈子

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