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2023.10.03 10:00

フランク・ロイド・ライトが来日直前に設計の邸宅、2.2億円で売りに

米ウィスコンシン州ミルウォーキーにある米建築家フランク・ロイド・ライト設計のボーク邸(Raymond Boyd/Michael Ochs Archives/Getty Images)

米建築家フランク・ロイド・ライトが設計した邸宅が売りに出されるのは、そうあることではない。

米ウィスコンシン州ミルウォーキーのノースポイント地区にある「Bogk House(ボック邸)」は、ライトが地元の実業家フレデリック・C・ボックと妻メアリーの依頼を受け、東京の帝国ホテル建築のため来日する直前に手掛けた邸宅だ。1917年に完成したこの邸宅が今、150万ドル(約2億2500万円)で売りに出されている。ボック邸が住宅市場に出回るのは過去107年間で2回目だ。

ミルウォーキーでライトが設計した唯一の一戸建て住宅だという事実が、この邸宅の希少価値をいっそう高めている。邸宅と合わせ、完成当時の傑作や後世の作品を含むライト設計の家具コレクションも売却される。家具は10月中旬まで90万ドル(約1億3500万円)の価格上乗せで邸宅と共に販売され、その後は競売大手クリスティーズの独占協力の下、オークションに個別出品される。

ボック邸は1955年にバーバラ&ロバート・エルスナー夫妻が購入し、保全に努めてきた。バーバラ・エルスナーは歴史的建造物保全活動の草分け的存在で、フランク・ロイド・ライト建築保存協会の創設者でもある。

邸宅は1972年に米国家歴史登録財に指定され、また歴史的地役権も設定されており、建築の特長のいくつかは永久保存されなければならない。ライト自身がエルスナー夫妻による邸宅購入後、「良い顧客のための良い時代の良い家」だと宣言している。

ライト建築のファンならその様式の特長をよく知っているだろうが、ボック邸の設計は初期の「プレーリースタイル(草原様式)」とは異なる。間仕切りを少なくしたオープンプランの邸宅は、寝室5つと浴室4つを備え、建物面積は約624平方メートル。ステンドグラス窓、天井埋め込み式照明、作り付けのキャビネット、暖炉、タイル張りの噴水などに建築当時の装飾がそのまま残されている。この時期のライト建築にはめずらしく、車1台分のガレージもある。

1階は、ほぼ正面にリビングルームがあり、奥にキッチンとダイニングルームが続く。上階には寝室5つのほか、メアリー・ボックが室内で洗濯できるようにライトに設計を依頼した、広々とした屋根裏部屋がある。邸宅の中は自然光で満たされている。

エルスナーと亡き夫ロバートは邸宅購入時、ライトの設計構想に近い状態を維持しようと決意。ライトに造園のアドバイスを求める手紙まで書いた。ライトはこれに応じ、邸宅にふさわしい家具も提案したという。

夫妻はフロリダに住んでいたボックの娘にも手紙を送り、完成当時のダイニングチェアとサイドチェアを買い戻した。さらにエルスナーは、ライト建築のビジョンを継承する建築事務所タリアセン・アーキテクツに、ボック邸用の特注家具の制作を依頼した。これらの家具もすべて売りに出されている。

「ボック邸はミルウォーキーで比類ない邸宅だ」とクリスティーズ・インターナショナル・リアル・エステートの出品代理人メリッサ・ルグランドは語っている。「ライト建築の傑作の一つであり、歴史の一部であり、芸術作品でもあって、湖にほど近い美しい地域に建っている」

エルスナーと家族は、邸宅を売り出すに当たり、購入者がライトの建築ビジョンを遺産として受け継ぐことを願っている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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