発表によると、マードックは名誉会長となり、会長職は長男のラクラン(52)が引き継ぐ。CNNによれば、マードックは従業員宛てメモで「別の役割を担う時が来た」と説明。ラクランは声明で、マードックが両社に対し「貴重な助言」を行い続けると述べている。
マードック家のビジネス帝国は、いずれも上場企業であるFOXコーポレーションとニューズ・コーポレーションの2社に分かれている。FOXコーポレーションの傘下にはFOXニュースとFOX放送が、ニューズ・コーポレーションの傘下にはウォール・ストリート・ジャーナルやニューヨーク・ポストといった新聞や、出版社のハーパーコリンズなどがある。
フォーブスはマードック一族の保有資産額を173億ドル(約2兆5500億円)と推定。そののほぼすべてが両社の株式だ。
マードックは、FOXニュースの報道姿勢などをめぐり、しばしば論争を巻き起こしてきた。また、ニューズ・コーポレーション傘下の英タブロイド紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドの記者が有名人や政治家の電話を盗聴していたことが発覚。同紙は2011年に廃刊に追い込まれ、ニューズ・コーポレーションは2013年、このスキャンダルをめぐる訴訟で約1億3900万ドルを支払うことで和解した。
マードックが所有する企業各社はここ数年で、数々のスキャンダルに見舞われてきた。そのうちの一つは、2020年の米大統領選挙でドナルド・トランプが根拠なく主張した選挙不正をめぐるものだ。
米投票集計機メーカーのドミニオン・ボーティング・システムズは、同社の投票集計機がジョー・バイデン大統領に有利になるよう不正操作されたとの主張がFOXニュースに報じられたことで名誉を毀損(きそん)されたとして、同社に16億ドルの損害賠償を求める訴訟を起こした。マードックはこの裁判の宣誓証言で、FOXは虚偽の主張に関する報道を控えるべきだったと認め、FOXはドミニオンに対して7億8750万ドルを支払うことで和解した。ドミニオンの同業スマートマティックが起こしている同様の訴訟は、まだ解決していない。
(forbes.com 原文)