マフムドフはウラル採鉱冶金会社(UMMC)の設立者で、息子のジャハンギルも同じく制裁対象となった。マフムドフはウクライナに対する軍事侵攻を助けたとされるロシアの他の金属、鉱業、金融サービス企業も所有したり、役員を務めたりしている。一方のボカレフはかつてロシアの鉄道車両製造会社トランスマシュホールディングの社長を務めていた。同社には歩兵戦闘車両部品を製造する目的で、ロシア当局者が接触した疑いがかかっている。
米財務省は、マフムドフとボカレフは「ロシアの組織犯罪とつながっている」として、特にボカレフは利益を分散させるためにペーパーカンパニーを設立し「制裁を逃れようとした」と主張している。ボカレフはロシアのセルゲイ・ショイグ国防相のほか、大統領府(クレムリン)の他の高官や家族とも個人的なつながりがあるという。
フォーブスは、マフムドフの資産価値を68億ドル(約1兆円)と見積もっている。欧州最大の石油ターミナルであるウスチルガオイルの半分を所有するボカレフの推定資産は24億ドル(約3500億円)。
制裁の対象となる他の組織には、ロシアの「軍隊に必要な技術を獲得、開発、維持する能力」を支援した企業が含まれ、これには建設、エネルギー、IT部門などに関連する企業が名を連ねている。今回の制裁についてジャネット・イエレン米財務長官は、ロシアの軍事供給網を対象に、同国のウラジーミル・プーチン大統領が「ウクライナに野蛮な戦争を仕掛けるために必要な装備、技術、サービスを奪う」ものだと説明した。
米財務省は先月もロシアの新興財閥オリガルヒに対する制裁を発表していた。対象となったのは、ロシアの民間金融コンソーシアム「アリファグループ」の監査委員を務めるミハイル・フリードマン、ピョートル・アベン、ゲルマン・ハーン、アレクセイ・クジミチョフの4人。
他のロシア人実業家やオリガルヒも昨年以降、欧米諸国から同様の制裁を受けている。昨年3月に英政府から制裁を受けたサッカーのイングランド・プレミアリーグ、チェルシーのオーナーであるロマン・アブラモビッチもその1人だ。そのほか、石油企業ロスネフチのイーゴリ・セーチン最高経営責任者(CEO)、金属企業En+グループの設立者オレク・デリパスカ、VTB銀行のアンドレイ・コスチン会長、ガスプロムのアレクセイ・ミレルCEOらがいる。
専門家の中には、制裁はロシアのオリガルヒを刺激し、同国政府に対する支援を強めるだけだとする向きもある。公認マネーロンダリング防止専門家協会(ACAMS)のジョージ・ボロシンは、制裁は「政策の観点から見れば、あまり効果的ではない」と指摘している。
(forbes.com 原文)