※本記事はAIG損害保険による寄稿記事です
パートナーとしてお客さまの与信管理に伴走できるように
あまり聞きなれないが、「取引信用保険」という保険商品がある。これは貸倒れリスク、つまり「取引先が代金を支払えなくなってしまうリスク」に備える保険だ。
例えば、取引先が商品を受け取ってから90日後に代金を支払うという契約を結んだが、商品受け取り後に資金繰りの問題や倒産で支払えなくなってしまった場合に、その貸倒れの損害を補償してくれる。ヨーロッパではより一般的な保険で、日本でも20年ほど前から徐々に浸透してきており、現在では多くの損害保険会社が扱っている。
AIG損保の取引先でグローバルビジネスを展開する企業は、取引信用保険を採用するケースが増えてきているという。この保険を長く扱ってきた益はこう説明する。
「AIGの取引信用保険が選ばれる理由のひとつは、やはりグローバルネットワークです。AIGはグローバルで取引信用保険を販売しているので、独自のデータベースがあるのです」
AIGは自分たちのネットワークの中に、世界中の企業情報が蓄積されており、海外の企業であっても国と住所、社名を打ち込むだけで決算情報などを入手することができる。
そのようなスピード感やネットワーク力でAIG損保を選ぶ企業も少なくないという。だが、益はAIGの取引信用保険が選ばれる最大の理由は、パートナーとしての「客観視」力だと力説をする。
「私たちがある取引先の与信についてリスクが高いとアドバイスをしても、その取引先との付き合いを継続するかどうかを最終的に判断するのはお客さまです。ですから、取引信用保険のお見積りを作成する段階から、お客さまと密に情報をやり取りしながら、お客さまにとってどういう形がベストなご提案なのかを一緒に考えることを心掛けています」
一般的な取引信用保険の中には、「与信管理のアウトソーシング」をうたうケースも少なくない。損害保険会社が取引先のリスクを評価して、この取引先は保険でカバーできるが、この取引先は決算の内容が良くないので今後は保険ではカバーできない、というような形の提案をし、企業はその提案に従って取引先を選定するという考え方である。
このような手法を取ることで、企業としては実質的に与信管理を損害保険会社に外注することができ、かつ保険も確実に付保できるというわけだ。
益は「このようなやり方も顧客サービスとして正解のひとつかもしれないが、AIGの考えは少し異なっている」と説明をする。
「ビジネスパートナーというのは、決算内容が悪くなったらすぐに契約をやめるというような関係ではなく、長年培ってきた信頼関係も大切にするものだと思います。保険はあくまでお客さまのビジネスをサポートするためのものですから、個々の事情を考慮すべきだと私は考えています。ですから、お客さまと一緒に与信管理をするような考え方で、パートナーとして最善の保険をご提案していきます」
パートナーであるからこそ、お客さまに「共感」しながらもAIGの視点から導かれた意見は伝える。「許容が難しいリスク」と判断すれば、それを伝えることもある。例えば、あるお客さまの社長から取引信用保険の見積りを依頼された時のことだ。
挙げられた取引先を審査すると、ほとんどが上場企業などの信用度が高い企業だったが、1社だけ信用度がかなり低い取引先があった。取引先の規模も非常に小さい。
そこで、見積りを依頼してきたお客さまに、なぜこの取引先と大きな取引をしているのかと質問をしたところ、「昔から取引を続けていて、家族ぐるみで付き合いがある会社だ」という説明を受けた。
益としてもその「思い」にはなんとか報いたいという気持ちはあったが、その取引先を客観的に見ると明らかに倒産するリスクが高い。そこで、残念ながらこの取引先は保険の対象として含めることはできない旨を伝えた。社長は「君が生まれる前からの付き合いで、60年も取引している。これまで一度も支払いが遅れたことなどないというのに、保険の対象にできない取引先とは」と不愉快そうだったという。
だが、ほどなくしてその社長から益のところに連絡があったという。
「実はその取引先が倒産してしまったのです。そこで社長さんも社外の視点の重要さを痛感した、と契約をしてくれました。取引信用保険をご契約いただく過程で、保険会社はお客さまの取引先の倒産リスクを決算内容等の客観的な情報をもって審査します。保険会社を第三者の視点として、お役立ていただけることがあるのです」
カントリーリスクの引受では、ヨーロッパ・米国市場での「知見」が発揮される
このようにパートナーとして共に与信管理のアドバイスをしていく「取引信用保険」のほかにも、多くの企業に支持されているAIGならではの保険商品がある。それは「ポリティカルリスク保険」だ。この商品は与信リスクに対応しているという点では取引信用保険と似ているが、その原因を取引先のある国の「カントリーリスク」に特化している。
例えば、取引先は決済するための資金はあるものの、国の情勢が不安定になり、クロスボーダーの送金規制がかかって決済ができなくなるリスク、取引先が国営企業の場合に国の規制により支払いができなくなるリスクなどがこれにあたる。
このような「カントリーリスク」を引き受けることができるのも、グローバルネットワークをもつAIGならではだと益は説明する。
「AIGはヨーロッパ・米国でポリティカルリスク保険を長年引き受けており、どこの国にどのようなリスクがあるというような知見を豊富にもっています。日本でお受けする問い合わせもグローバルの引受部門と連携し、保険の引受を判断するための知見を共有してもらうことで、リスクを理解し、お客さまへのスピーディーなご提案につなげています」
AIGが多くの海外進出企業に支持されるのは、お客さまがクロスボーダーの取引で直面するリスクを理解し、寄り添う力があるからかもしれない。
益 尚⼦ (ます・なおこ) ◎AIG損害保険株式会社 取引信用保険部長 兼 信用保険チームリーダー。2002年9月に旧AIU損害保険会社に入社。前職の外資系メーカーでの与信管理を司る審査部での経験を活かし、取引信用保険を日本で推進するために入社。入社以来、主に大企業向けに一貫して取引信用保険およびポリティカルリスク保険の引受および推進を担当。AIG本社とのコミュニケーションを深め、AIG本社の知見を元に日本のマーケットでも取引信用保険を導入し、日本のお客さまからのご意見を反映しながら日本特有の商品も作り上げてきた。
AIG損保のグローバルリスクマネジメント
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