コロナ禍におけるICU入室者の総数の推移です。薄い茶色がコロナ感染者ですが、2022年1月以降におそらくオミクロンによる感染増のために増加していますが、その後はごく少数に留まっています。
ICU入院者のうちコロナ感染者だけを見てみましょう。
オミクロン感染拡大に対応して2022年1月に入院者が増えていますが、その後は落ち着いています。つまり、検査をしていないために感染者数は実際より少ないのは確かですが、重症者も増えていないため、感染は落ち着いていると推測できると思います。
*図では、コロナ感染が主病名か副病名か、つまり、コロナ感染が原因でICU治療が必要となったのか、それとも、他の病気のためにICUに入り、たまたまコロナ陽性だったのかを区別していますが、過半数は副病名であり、つまり、コロナ感染で重症化する人は少ないことがわかります。
「コロナ禍前の日常に戻らなければならない」
2023年2月、公衆衛生庁は、「多少の風邪症状があっても自宅待機することなく出勤、通学しても良い」という通達を出しました。この9月からテグネル氏の後、2人目の後任となった国家疫学者のギセレン氏は、この時、「コロナ禍前の日常に戻らなければならない。国民は常識を働かせて有症時に出勤するか自宅待機にするかの線引きをしなければならない。軽微な症状であれば自宅待機をする必要はない。我々は注意しすぎる訳にもいかないのだ。風邪ウイルスは社会に拡がるものだ。今までもそうだったし、これからもそうあり続けるからだ」と、メディアのインタビューに答えました。https://www.aftonbladet.se/nyheter/a/O8WJ43/fhm-s-nya-rad-ga-till-jobbet-med-snuva
スウェーデンでは国民は、コロナ禍以前同様のマスクのない日常生活を送っています。新型コロナウイルスは依然、変異を続け、感染はゼロにはならないことも事実です。時には重症者や死亡者も出ます。しかし、インフルエンザなど通常の風邪ウイルスと同様にとらえ、個人個人が常識的な行動をすることにより、国民も医療現場も混乱することなく過ごしています。
宮川絢子(みやかわ・あやこ)◎スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務。平成元年慶應義塾大学医学部卒業。スウェーデン泌尿器科専門医、医学博士、カロリンスカ大学およびケンブリッジ大学でポスドク。2007年スウェーデン移住。スウェーデン人の夫との間に男女の双子がいる。