欧州

2023.09.11 17:00

新型コロナ「ソフト対策」も話題だったスウェーデン、最新事情は? 現地日本人医師がみた

Getty Images

スウェーデン在住の宮川絢子博士は、スウェーデンで医療崩壊が起きなかった理由 現地日本人医師の考察 など大きな反響を呼んだ寄稿でおなじみの、スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務の医師である(スウェーデン移住は2007年)。

わが国では「第9波」「変異株EG.5」など危機意識がふたたび高まっている。スウェーデンの新型コロナウイルス対応は「都市封鎖せず」の独自路線、ソフト対策で世界的にも話題だったが、同国では「日常」がどの程度戻っているのか。現地の昨今のコロナ事情について以下、宮川医師にご寄稿いただいた。


「WHOの緊急事態終了宣言」に先立つこと1年超、対策全撤廃

随分、ご無沙汰してしまいましたが、その後のスウェーデンのコロナ事情について書いてみたいと思います。

スウェーデンのコロナ感染症に対する対策は、2022年2月9日に全て撤廃されました。そして、2022年4月1日には、新型コロナウイルスは、社会に脅威を及ぼすウイルスから外されました。WHOが3年3か月にわたる新型コロナ感染症による緊急事態の終了を宣言した2023年5月5日に1年以上先立ってのことでした。以来、国民にはマスクも必要ないコロナ禍以前の生活が戻ってきました。それでも、「風邪症状が少しでもあれば自宅待機」などのコロナ禍以前より多少厳し目のルールは残っていましたし、病院で患者さんの診察をする際にはマスク着用をしていました。

それから約1年、スウェーデンでは特にコロナ感染に関して問題も起きることなく、人々はパンデミックを過去のものとして生活をしています。病院でも医療従事者が患者さんを診察する際にも基本的にマスクは不要となりました。入院患者の面会制限も撤廃されました。今では、日常生活には殆ど関係のない話題になってしまっているため、スウェーデンでもニュースにならない状況が続いています。

現在の感染状況は?

それでは、現在のスウェーデンの感染状況を見てみましょう。
図1 感染者数

図1 感染者数


新型コロナ感染症は、インフルエンザと同様、診断されれば報告が必要とされる感染症ですが、既にスウェーデンでは、必要と判断された場合以外の検査は行われていません。医療従事者が風邪症状を呈した時でも検査は必要ではなく、症状が軽快するまで自宅待機になるだけです。よって、通常の診療所などでは、まず検査されることはありません。ですから、実際には報告数より多くの感染者がいると推測されます。しかしながら、感染者のうち一定の割合が重症化するとすれば、入院患者数の動きは感染者数の動きと一致しているはずであると考えられています。
次ページ > 「コロナ禍前の日常に戻らなければならない」

文=宮川絢子 (編集=石井節子)

ForbesBrandVoice

人気記事