宿の看板のそばに小さく刻まれたRELAIS & CHATEAUX(ルレ・エ・シャトー)の文字と白百合の紋章。同名の聖書のような分厚い本がラウンジに置かれており、その中にはヨーロッパを中心にこぢんまりとしたセンスの良い宿や美味しそうな高級レストランがたくさん紹介されていた。
その後、その名前にはやはり高級旅館の「強羅花壇」(箱根)や、老舗フレンチ「オトワレストラン」(宇都宮)、ミシュラン3つ星のレストラン「レフェルヴェソンス」(西麻布)でも出会った。これはきっと、小規模で高品質なサービスを提供する宿やレストランの結社に違いない……このころにになってようやく「ルレ・エ・シャトー」の何たるかが想像つくようにはなっていたが、では実際にどんな団体なのか? と問われたら、言葉に詰まりそうだ。
過日、「ルレ・エ・シャトー」新会長に就任したローラン・ガルディニエ氏が来日。このほど日本人で初めて国際執行委員に就任した音羽花菜さんが勤務する「オトワレストラン」で取材に応じてくれた。
「ルレ・エ・シャトー」の本質はファミリースピリット
──「ルレ・エ・シャトー」の始まりは?
きっかけは1954年。当時、南仏とパリを結ぶ国道沿いにあったホテルやレストランのシェフが7人集まり、「ラ・ルート・デュ・ボヌール(幸福の道)」という広告を共同で出したことが始まりです。この道沿いであちこち立ち寄って幸福になってください、というキャンペーンですね。
この活動はその後徐々に拡大し、70年代にはスイスやベルギー、イギリスやイタリアへ進出。80年代にはアメリカ、日本へと広がり、現在では世界65カ国・地域で約580軒が加盟しています。
──日本でも「オトワレストラン」ほか、山代温泉の「べにや無何有」や金沢の「日本料理 銭屋」など20軒余りが加盟しています。ラインナップを見るとみな高級ですが、決してバブリーじゃないというか、一種の品格があるという点で共通しているように思います。
それはうれしいお言葉ですね。「ルレ・エ・シャトー」には厳格な入会基準があり、希望すれば誰でも加盟できるわけではないんです。まずはチェーンなどではない個人が独立して経営していること、そしてガストロノミックであるということ、さらには地元に根付き、その特色を十分に表現しているか、その地域でベストであることなどが条件となります。
毎年500軒ほどのお申込みをいただきますが、実際に加入していただくのはそのうちの15~20軒ほどでしょうか。