Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023では、受賞者の数を30人から120人に増やした。その背景には、「未来の社会を想像する」ためのガイドブックをつくれないか、という意図がある。
『Forbes JAPAN』では2023年版から、世界を変える30歳未満にフォーカスした「30 UNDER 30」の受賞者数をこれまでの30人から120人に大幅に増やした。「ENTERTAINMENT & SPORTS」部門30人、「ART & STYLE &SOCIAL」部門30人、「BUSINESS& FINANCE & IMPACT」部門30人、「SCIENCE & TECHNOLOGY & LOCAL」部門30人からなる120人だ。
受賞者増加の背景には、米『Forbes』が20分野でそれぞれ30名ずつ選出し、総計600名が受賞しているからという現実的な理由ももちろんある。ただ、もうひとつには、『Forbes JAPAN』がこれまで取り上げてきた2つのテーマを前提にした場合、増やすことが将来世代にとっていいのではないか、と考えたからだ。
120人への「2つの背景」
ひとつは、米『Forbes』がコロナ禍以降、提唱してきた「インクルーシブ・キャピタリズム(包括的な資本主義)」という概念だ。すべての人を包摂しながら発展する資本主義のあり方を意味する言葉である。それは、新型コロナウィルスを契機に顕在化した、変化する経済・社会のあり方への言及であり、その方向性に対する提案でもある。社会、経済が「新しいスタンダード」への移行期にあることを意味している。もうひとつが『Forbes JAPAN』23年6月号(4月25日発売号)で取り上げた「グッド・アンセスター(よき祖先)」という概念だ。23年1月の世界経済フォーラム年次総会2023(通称「ダボス会議」)のメインテーマであった「分断された世界における協力の姿」に影響を受けて提案したキーワードである。英国気鋭の文化思想家、ローマン・クルツナリックが提唱し、日本の僧侶である松本紹圭がダボス会議などで紹介している「グッド・アンセスター」は、こう問いを投げかけている。
「わたしたちは未来世代の『よき祖先』になれるのか」「どうしたら、未来世代のよき祖先になれるか」。言い換えれば、次のような問いとも言えるだろう。「私たちは、どのような経済社会をつくっていくのか。そして未来を生きる人たちに、どんな世界を渡すことができるのか」と。