けが後の大谷の価値は
大谷の今後の契約は、これまでも基本的にそうだったように、長期の契約になるだろう。これは平均年俸をできるだけ抑えることで、登録選手名簿を柔軟に変更できるようにすると同時に、球団の年俸総額をいわゆる「ぜいたく税」(規定額を超えた場合の課徴金)のかからない範囲におさめるためだ。期間が長くなるということはつまり、大谷の契約では初めから、どこかの時点で(たとえ故障がなくても)二刀流から指名打者のみへの移行を考慮に入れておく必要があるということだ。数字が示すとおり、大谷は現在、球界最高の打者の1人である。その価値は、彼がリハビリのため打席に立てなくなるのでないかぎり、内側側副靱帯の損傷によっても変わらないだろう。
一方、投手としての大谷の今後については、まだはっきりとしたことは言えない。復帰したときに、はたして今季と同じように先発投手として登板できるのかといった疑問は、当然出てくるだろう。つまり、大谷の耐久力がリスクとして問題になってくる。ただ、リハビリを経て今季のけが前に近い、あるいは同等の状態に戻ることができれば、リスク評価は主にイニング数の制限、あるいはリリーフとしての起用などをめぐるものになるだろう。
以上を考え合わせると、けがによるマイナス面も考えれば大谷を誘致できるチャンスが出てきたと感じている球団が、以前よりも増えていると思われる。1つ、ふたつの球団が5億5000万〜6億ドル(約800億〜870億円)くらいの額を提示して交渉する代わりに、それ以下の額でより多くの球団が入札するのではないか。
大リーグ選手で最高額の契約を結んでいるのは、大谷の同僚であるエンゼルスのマイク・トラウトで、2019〜30年の12年総額4億2650万ドル(現在の為替レートで約620億円)となっている。それも踏まえると、また、大谷についてある程度の投球ができそうだとなお判断されているなら、大谷にはまだ並外れた価値があるはずだ。以前よりも多くの球団が大谷獲得を狙っているとすれば、当然のことながら入札合戦は激しくなる。では、大谷側はそこから何を引き出せるだろうか。
大谷の打撃力、投手としてもまだ残っている可能性がある価値、そして予想される熾烈な争奪戦を考えると、彼の価値は思われているほど下がらない可能性がある。なんだかんだ言って、大谷がオフシーズンに史上最高額の契約を結ぶ可能性は残っているということだ。大谷は球場で選手として価値を提供しているだけでなく、市場でも引っ張りだこで高い価値がある。5億ドル(約730億円)という契約額はまだ十分ありえるだろう。
(forbes.com 原文)