映画

2023.08.31 11:30

恐ろしい「スイート・マイホーム」 齊藤工が撮るホラーの新境地

(左から)齊藤工、神津凛子

(左から)齊藤工、神津凛子

映画やドラマで俳優として活躍する傍ら、近年は監督・プロデュース業でもその才能を発揮する齊藤工。
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2017年公開の長編映画デビュー作『blank13』では、第20回上海国際映画祭でアジア新人賞部門最優秀監督賞を受賞し、話題となった。9月1日には長編最新作の『スイート・マイホーム』が公開となる。

原作は、2019年の第13回小説現代長編新人賞を選考委員の満場一致で受賞した、神津凛子の同名小説。ラストシーンに同賞の選考委員全員が戦慄したと言われる、衝撃のデビュー作だ。

物語の舞台は、極寒の冬の長野。主人公の清沢賢二(窪田正孝)は、幼い2人の娘と寒がりの妻のために、たった一台のエアコンで家中を隅々まで暖められる「まほうの家」を購入する。幸せの絶頂にいた賢二だが、徐々に「家」を取り巻く恐怖の連鎖に巻き込まれていく──。
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この秋注目の本作の監督を務めた齊藤工、そして原作者の神津凛子に制作背景や魅力を聞いた。

真新しさ”に宿る、新しい恐怖体験

──齊藤監督の本作との出会い、第一印象は。

齊藤:2019年、本作が刊行されてすぐのタイミングで、赤城プロデューサー(フラミンゴ)と中村プロデューサー(日活)が僕の事務所に直接お越しいただき、『スイート・マイホーム』の監督をやらないかと提案いただきました。

僕自身、本を読むのは遅いほうなんですよ。しっかりと時間をかけて、恐る恐る読みました。その時思ったのは、この本は、「実写にすることでたどり着ける表現」というものをすでに描ききってしまっている、ということです。

これは男性が、女性性や母性に感じる“怯え”に似ている感覚。そんな、聖域のような部分を突き付けられる読書体験でした。

──神津先生は、映画化の話を聞いてどう思いましたか。

神津:最初、映画化の話をいただいたときは「信じられない」と驚きが大きかったです。齊藤監督からも様々考えていることを共有いただきつつ、物語が完成していくのを楽しみにしていました。
 

──本作の舞台は「まほうの家」。その“暖かい家”からは想像もつかないようなおぞましいストーリーが展開されていきますが、神津先生はどのように本作を生み出したのでしょうか。

神津:私自身、作品の舞台となった長野に住んでいるのですが、この「まほうの家」と同じような構造の“暖かい家”を建てた経験から着想しました。

実際に「まほうの家」に住み始めて、「ここであんなことやこんなことが起きたら怖いな〜」と日常の中に潜む“怖さ”を妄想する中で、勝手にキャラクターが浮かんできたんです。あとは彼ら・彼女らが勝手に動いて、いつの間にかあのラストに辿り着いていました。

(c)2023『スイート・マイホーム』製作委員会 (c)神津凛子/講談社

ラストを決めずに前から順番に書いていたら“行きついた”ので、はじめはあまりこの作品の怖さが分からなくて。周りの人に読んでいただいて話を聞くと「すごく怖い」と言われるので、「そんな酷い話だったかな」と思ったほどです。
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文=釘崎彩子 編集=田中友梨 写真=山田大輔 ヘアメイク=赤塚修二 スタイリング=三田真一

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