この症状は「肢端チアノーゼ」として知られ、脚の静脈の血流がうっ滞することで生じる。よく見られるのは手が青紫色に変色する症状だが、足や脚部でも、小血管がけいれん性の収縮(れん縮)を起こした後に生じることがある。
英リーズ大学のマノージ・シバン臨床准教授は、「患者は新型コロナ感染前には肢端チアノーゼを発症したことがなく、特筆すべき症例だ」と述べている。
准教授はさらに、「肢端チアノーゼを発症した患者は、それがロングコビッドや自律神経失調症の症状である可能性に気付かず、目に見える変化に不安を感じるかもしれない。同様に、臨床医も肢端チアノーゼとロングコビッドの関連性を認識していない恐れがある」と説明。「臨床医が患者に適切な処置を施すために必要なツールを手に入れられるよう、ロングコビッドとしての自律神経失調症について認識を高める必要がある」と指摘している。
肢端チアノーゼを発症しやすい危険因子としては、肥満度をあらわす指標であるBMIが低いこと、神経学的障害があること、寒冷な地域に住んでいること、屋外で働く仕事に就いていることなどが挙げられる。肢端チアノーゼの正確な発症率と有病率は、まだわかっていない。
シバン准教授らのチームはまた、この33歳の男性患者を体位性頻脈症候群(POTS)とも診断した。座ったり横になったりした状態から立ち上がった直後に心拍数が上昇するのが特徴で、失神や立ちくらみなどの症状が現れる。これらの症状への対処としては、塩分摂取量を増やすことが推奨されることが多い。
米国立衛生研究所(NIH)によると、POTSはまれな疾患で、罹患率は約0.2%。米国では推計約50万~100万人が診断を受けている。シバン准教授らは先行研究で、新型コロナ後遺症の患者はPOTSと自律神経失調症を発症しやすいと報告していた。
ランセットの症例研究では、新型コロナ後遺症に悩む人は一般人口の少なくとも10%に上るが、さらに少数の後遺症患者に、まれな症状が発現する可能性があると強調している。
ロングコビッドの主な症状は、重度の疲労(筋痛性脳脊髄炎としても知られる)、ブレインフォグ(思考力の低下)、睡眠障害、集中力の低下、嗅覚・味覚障害、抑うつや不安など。最近の研究によれば、これらの症状は1年以上続くこともあるが、通常は3〜6カ月で治まる。
「長期的な病態における自律神経失調症について、認識を深めなくてはならない。より効果的な評価・管理アプローチと、この症候群に関するさらなる研究が必要だ。そうすることによって、患者と臨床医の双方がこれらの症状によりよく対処できるようになる」とシバン准教授は語った。
(forbes.com 原文)