今回のドタバタした発射は、日本の対応と好対照をなすものだ。1回目の失敗は、3月7日に打ち上げに失敗した日本のH3ロケットと同様、「2段目ロケットのエンジン不点火」にあったとみられていた。H3についてはJAXAが対策本部を立ち上げ、原因と対応策を慎重に検討している。7月31日付の発表資料でも、まだ次の発射時期への言及はなかった。北朝鮮自身、2012年4月の打ち上げ失敗時には、次の発射まで約8カ月をかけた。異例の短期間での再発射は科学技術のプロセスを無視し、金正恩総書記自らが、大々的に祝うと宣言していた9月9日の建国75周年や8月21日から始まった米韓合同軍事演習を意識した結果だろう。
案の定、失敗に終わったが、早くも3度目の発射を10月に行うと予告した。10月10日は朝鮮労働党の創建記念日だ。やはり、政治的な事情が優先しているのだろう。
北朝鮮はしばしば、科学や教育、文化などを後回しし、政治・軍事的な判断を最優先してきた。最近、市場での個人取引を厳しく制限し、国外からの情報流入を取り締まっている。自分たちの政治体制を守るために、経済や文化の発展を無視している。今回の発射も、北朝鮮が失敗国家だということを自ら認める行為の一つに他ならない。
北朝鮮が5月の打ち上げに失敗した機体を回収した韓国政府によれば、北朝鮮の軍事偵察衛星の性能は、軍事的には全く用をなさないものだという。北朝鮮の衛星の解像度は10~3メートル程度とされ、最も北朝鮮の技術力を評価する専門家でも「解像度1メートル」としている。世界最高水準とされる米軍の偵察衛星はもちろん、米国の民間衛星会社が運用する衛星の50〜30センチにも及ばない。在韓米軍基地や韓国軍基地にある航空機や艦船は特定できる程度だろう。