もちろん、これは「初めの一歩」であり、継続が重要だ。日本も2003年に初めて情報収集衛星を発射した当時、解像度は1メートルにも達しなかったという。今では、解像度は少なくとも米国民間衛星程度のレベルに到達し、データ通信衛星も、海外の衛星運用基地も保有している。北朝鮮が衛星開発を今後、日本並みに継続できるのなら、10年後、20年後には大きな脅威になるかもしれない。
ところが、金正恩体制の長期政権化を危ぶませるような報道が、北朝鮮から頻繁に伝えられてきている。朝鮮中央通信は22日、金正恩氏が西部・南浦市に位置する干拓地の堤防決壊による被害復旧現場を視察し、「今回の被害は自然災害による災難ではなく、怠け者たちの無責任性と無規律による人災だ」と批判したと伝えた。金徳訓首相を名指しで厳しく叱責したという。一部のメディアは「異例の行動」と伝えたが、そんなことはない。2012年5月には平壌・万景台遊園地で、18年7月には東北部の漁郎川発電所の建設現場で、幹部たちをそれぞれ面罵した。部下に責任をなすりつけるのは正恩氏の得意技の一つだ。
また、22日の報道では、正恩氏が膝まで水につかりながら被害現場を見て回る写真が配信された。これも、具体的な成果を示せないために、代わりに服装や仕種で国民の歓心を買おうとする「パフォーマンス政治」のひとつだ。今月だけでも、装甲車に乗ったり、海軍艦艇に乗船したりと忙しい。朝鮮中央テレビの現地視察映像をみると、正恩氏は静かに語ったりはしない。常に身ぶり手ぶりを大げさにするオーバーアクションばかりだ。
20年経てば、北朝鮮の軍事偵察衛星は大きな脅威になるだろう。しかし、それまで金正恩氏に時間的な猶予があるかどうかはわからない。少なくとも、現在の北朝鮮の行動は、自らの首を絞める結果を招いているようにしか見えない。
過去記事はこちら>>