欧州

2023.08.22 11:15

ロシア、同国一の億万長者を汚職容疑で訴える 資産差し押さえの一環か

一方で、プーチンは西側の企業からも資産を取り上げようとしている。ロイター通信によると、ロシアの戦力をそぐために先進7カ国(G7)がロシアへの制裁強化を求めた後、ロシア大統領府は4月にフィンランドのフォータムとドイツのユ二パーがロシア国内に所有する発電所を差し押さえた。ロシア企業に対する制裁が続けば、欧米の資産をさらに差し押さえるとプーチンは脅している。フィナンシャル・タイムズによると、ウクライナとの紛争が続く中でロシア政府に忠誠を誓った裕福な実業家らは経済的な報酬を与えられ、食品グループであるダノンの現地法人やバルチカ醸造所など、差し押さえられた資産を購入する機会を与えられている。

メルニチェンコの純資産は8月20日時点で244億ドル(約3兆5500億円)。世界の富豪ランキングで63位、ロシア国内ではトップだ。メルニチェンコは1991年のソビエト連邦崩壊の2年後に、ロシアで最も成功したプライベートバンクの1つであるMDM銀行を設立。その後、肥料製造会社EuroChemや石炭エネルギー会社SUEKも創業した。メルニチェンコの金属・鉱業企業は10万人以上を雇用している。ウクライナでの戦争を受けて肥料価格が高騰したため、メルニチェンコの純資産は2022年から2023年にかけて111億ドル(約1兆6150億円)増えた。

ロシアのウクライナ侵攻後、メルニチェンコとその妻は、米国と欧州連合(EU)から制裁を受け、EuroChemとSUEKを所有する信託の受益者から外れた。さらにイタリア当局も昨年、メルニチェンコのヨットを押収している。メルニチェンコの広報担当者は以前、EUの制裁は「不合理でナンセンス」だとフォーブスに語っている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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